MongoDBやConfluentはライセンス変更で自己防衛
「クラウド大手はOSSベンダーから“搾取”している」は本当か
AWSをはじめとするクラウド大手が、自社のデータベースサービスにOSSを採用するようになった。そのことからMongoDBなどのOSSのベンダーは、強力な手段である「ライセンス」を使って資産を守ろうとしている。
クラウドはリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)やNoSQL(RDBMSではないDBMS)といったDBMSにとって、優れた環境であることが実証されてきた。こうしたDBMSがユーザー企業に対してサービスとして提供されるようになり、クラウドベンダーとDBMSベンダーの双方に恩恵を与えている。
ところが最近、こうした状況を脅かす事態が生じている。クラウド向けのオープンソースソフトウェア(OSS)のライセンスを巡って、クラウドベンダーとDBMSベンダーが衝突。結果として、ユーザー企業はライセンスの細部に目を向けることが必要になった。
最も大きな衝突の中心にいるのは、OSSのNoSQLベンダーであるMongoDBと、クラウドベンダーのAmazon Web Servicesだ。OSSを巡る緊張が表面化したのは、AWSが最近になって導入したNoSQLサービスの「Amazon DocumentDB」が発端だった。Amazon DocumentDBはMicrosoftの「Azure Cosmos DB」のように、MongoDBの同名NoSQLと互換性のあるAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を持つ。
Amazon DocumentDBは、OSSである「MongoDB 3.6」のAPIに準拠して、AWSが独自開発した。これはMongoDBが最近になって、ライセンス契約の一部条件を変更したことが理由だった。
MongoDBの策略
AWSがイベント「AWS re:Invent 2018」を開催した2018年11月当時は、MongoDBの新しいライセンスに関するニュースが注目の的だった。当時MongoDBはライセンス変更の理由として、AWSのような国際的なクラウドベンダーによる、MongoDBのOSSバージョンへの貢献を促すためだと述べていた。
MongoDBのライセンス変更は、それに先立つインメモリNoSQLベンダーRedis Labsのライセンス変更に倣った措置だった。Redis Labsは2018年8月、NoSQL「Redis」のモジュールのライセンスを変更した。他社がマネージドサービスの一部として、Redisのモジュールを再販することに制限を掛けるためだというのが、同社の説明だ。
クラウドのデータ処理ツールも、MongoDBの反撃の余波で改変されている。2018年12月にはConfluentが分散メッセージングシステム「Apache Kafka」関連コンポーネントの一部についてライセンスを変更し、「Apache License」のバージョン2.0から「Confluent Community License」に切り替えた。
Confluentはライセンス変更の目的について、Apache KafkaでSQLを利用するための「KSQL」といった、同社のストリーミングSQLエンジンの利用をコントロールすることにあると説明している。同社で最高技術責任者(CTO)を務めるネハ・ナーキード氏は「パブリッククラウドベンダー、とりわけAWSは、コミュニティーに大きく貢献することなく、OSSをサービスとして販売している」と主張する。
AWSはそうした批判をはねつけている。AWSにコメントを求めたところ、広報は「AWSはオープンソースコミュニティーの重要な貢献者であり、支持者だ」と述べ、「Xen」「Linux」「KVM」「Java」「Kubernetes」「Apache Lucene」といったプロジェクトへの貢献を挙げた。
声明の中でAWS広報は「AWSがMongoDBのコードから利益を得ているという主張は完全な誤りだ」と強調。「Amazon DocumentDBはライセンス対象のコードを一切使っていないからだ」と説明する。同社がOSS領域での取り組みにあらためて注力しようとしている兆候もある。2019年1月28日、同社はOSS団体Apache Software Foundationへのスポンサーシップを、最上位に当たる「Platinum」のレベルに引き上げた。
成功を収めるために大切なこと
AWSのようなクラウドは、MongoDBやRedis、「Apache Cassandra」といったNoSQLに加え、「MapReduce」「Apache Spark」「Apache Hive」をはじめとする、分散処理ミドルウェア「Apache Hadoop」の幅広いコンポーネントの手軽な利用を可能にした。半面、AWSがOSSをクラウドサービスとして提供することに関心を強めていることが原因で、一部のソフトウェアベンダーがライセンスについて考え直すようになった。
Apache Licenseや「GPL」「AGPL」といったソフトウェアライセンスが登場したころは、クラウドサービスについてはほとんど考慮されていなかった。だが「今後は変化が起こる可能性がある」と、データ処理サービスを手掛けるQuboleの最高経営責任者(CEO)、アシシ・ザスー氏は語る。
ザスー氏はFacebookでデータインフラ担当エンジニアリングマネジャーだった2007年から、OSSに関わってきた経歴を持つ。同氏は当時、同僚と共に、Apache Software Foundationの監修の下で、SQLライクの言語によるHadoopでの処理を可能にするHadoop Hiveの開発を主導するようになった。
ソフトウェアベンダーを経営するようになった今、ザスー氏は、クラウドベンダーとOSSベンダーの双方に問題があると見る。「OSSベンダーが成功を収めるために大切なのは、OSSから収益を上げられるモデルだ。それらの多くはRed HatにとってのLinuxのようなモデルだが、クラウドではそのモデルが幾分変化した」と同氏は言う。
サービスとしてのオープンソースクラウドデータベース
クラウドの役割は重要であり、クラウドから始まるイノベーションも増えている。OSSベンダーもこうした動きを認識している。「アプリケーションの全体的な性質が変化した。ユーザー企業はデータセンターで独自のアプリケーション構築や運営をしなくなった」。MongoDBのCTOで共同創業者のエリオット・ホロウィッツ氏は、そう語る。
TechTargetのIT投資動向調査の2019年版では、2019年にオンプレミスへのハードウェアやソフトウェアの導入を計画しているという回答は29.1%にとどまり、2018年の約43.0%から減少した。一方で2019年にInfrastructure as a Service(IaaS)の利用を計画しているという回答は29.9%となり、2018年版調査の26.5%から増えた。同じ調査では、20%を超す回答者が、2019年はクラウドにDBMSをデプロイ(配備)する見通しだと答えた。
MongoDB自らも、クラウドのDBMSサービスを運営していることは驚くには当たらない。これは「MongoDB Atlas」という。2018年、同社はクラウドDBMSを専門とするmLabを買収し、この市場への取り組みを強化している。
ホロウィッツ氏は、MongoDBのOSSに対する全般的な貢献をビジネスモデルだと位置付け、「現代の世界にライセンスを順応させたい」と話す。
クラウドデータベースのハーモニー
Quboleのザスー氏は「新しい倫理観が生まれることを望む」と語る。ただしOSSベンダーがクラウドベンダーに対して、こうした変化を強要できるかどうかを結論付けるのは「時期尚早だ」と言い添える。同氏は「背後で物事に貢献することは大切であり、ライセンスはユーザーがそのソフトウェアを使って、もっと大きなものを作り出せるような形で維持しなければならない」と主張する。ただしクラウドベンダーがこうしたメリットを提供できなくなるところまで、ライセンスが変更されてしまうと「それもまた問題になる」と語る。
多くのユーザー企業やベンダーと同様にザスー氏も、いつかOSSを使ったクラウドDBMSのライセンス問題に関して、より良い解決策が見つかることに期待を抱きつつ、「何らかの妥協点を見つける必要がある」と語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
8
積水化学工業が「SAP S/4HANA Cloud」の“全グループ導入”に踏み切った訳
-
9
データセンター事業者が「脱VMware」をした“例のライセンス問題”じゃない理由
-
10
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー