DaaS市場は急速に成長しているが、用途によってはオンプレミスのVDIの方が適している場合がある。オンプレミスVDIがDaaSよりも優れている5つの点を説明する。
仮想デスクトップを利用するための現実的な選択肢には、「仮想デスクトップインフラ」(VDI)をオンプレミスに構築するか、「DaaS」(Desktop as a service)を利用するかの2種類がある。それぞれが適する用途は同じではない。
クラウドにデスクトップをホストするテクノロジーが成熟するにつれて、DaaSはここ数年の間、注目度が高まっている。企業ニュース配信会社MarketWatchによると、DaaS市場は2017年に世界で6億5000万ドルに達し、2014年から2017年までの年間平均成長率は50%近くとなる。DaaS市場は2022年までに約47億ドルの市場になると、同社は予測している。
オンプレミスVDIの採用率も同様に増加しているが、成長率はDaaSには及ばない。企業ニュース配信会社Business Wireが2018年に発表したレポートでは、VDIの世界市場は、2016年〜2023年の年平均成長率が27%となると予測している。このことからDaaSが好まれる手段になりつつあると考えられる。調査会社GartnerはDaaSが2019年中に、機能面ではオンプレミスVDIと同等になると予想している。
DaaSの導入を検討するに当たり、従業員のユーザーエクスペリエンス(UX)の維持を目指すIT部門は少なくない。UXの問題はクラウドベンダーとの連携なしに解決できない。IT監視・トラブルシューティング用ソフトウェアベンダーGoliath Technologiesで、コンサルティングサービス責任者を務めるゲリー・ベア氏は「インフラの管理をクラウドベンダーに任せても、管理の責任まで社外に移管することはできないことに留意する必要がある」と話す。
オンプレミスのVDIとDaaSには、それぞれ長所と短所がある。IT環境や使用するアプリケーションによって、どちらを選ぶべきかが変わる。本稿はDaaSよりもオンプレミスのVDIの方が適した選択肢となる場合について、管理性やコスト、データ保護などの5つの観点から説明する。
オンプレミスVDIは、仮想デスクトップと、それをホスティングするインフラを細かく制御する必要がある企業に向いている。DaaSの場合は、ユーザー企業が仮想デスクトップに特定のカスタマイズをすることができるが、インフラの大部分の構成が非公開だ。このためユーザー企業による設定変更が制限されるほか、トラブルシューティングが困難になることもある。
DaaSのパフォーマンスや安定性の問題を解決するには、クラウドベンダーによるトラブルシューティングが必要になる場合がある。このためオンプレミスのVDIと比較して、DaaSは問題の診断と解決により長い時間がかかる傾向がある。
インターネット接続に制限があるか、接続の信頼性が低い企業では、DaaSよりもオンプレミスVDIの方が適している。DaaSのユーザーはベンダーがホスティングする仮想デスクトップに、インターネットを通してアクセスする。このためインターネットの通信量や速度が制限されていると、UXが低下する可能性がある。
DaaSを使用すると、会社のインターネット接続が単一障害点になる可能性がある。DaaSを全社導入したユーザー企業にとってインターネット接続ができなくなることは、従業員が会社のデスクトップにアクセスできなくなることを意味する。
オンプレミスVDIは、DaaSと比べて特殊な仮想デスクトップ構成を実行することに適している。DaaSベンダーは通常、規模や性能の異なる幾つかの仮想デスクトップの選択肢を提供しており、仮想デスクトップの種類によっては、短期間にリソースを大量に使用するリソース集中型アプリケーションを実行できない場合がある。
物理PCからの移行を検討している企業にとっては、オンプレミスのVDIがDaaSより良い選択肢となる可能性がある。会社によっては、VDIベースの仮想デスクトップで再利用できるOSのライセンスをすでに所有している場合があるからだ。
一部のDaaSベンダーは、ユーザー企業が自身で所有するOSライセンスの持ち込みを許可している。しかし多くの場合、サブスクリプション料金にはOSのライセンスコストが含まれている。そのため加入者がOSライセンスをすでに所持していても、追加のライセンス料金を支払うことになる。
機密データを保護するために仮想デスクトップを導入する企業は少なくない。従業員が端末に直接データを保存するのを防止するためだ。オンプレミスVDIでホスティングする仮想デスクトップは物理的に社内に存在するため、機密データを保護すべき場所に関してはDaaSよりも特定しやすい。
DaaSの仮想デスクトップの場合、機密データがインターネットを介して送信されたり、クラウドベンダーによって監視されたりする可能性がゼロではない。オンプレミスVDIの場合は、外部のネットワークを経由して不正にアクセスされるリスクは低くなる。
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