VMware仮想ディスクの「シンプロビジョニング」とは? 「シック」との違いはVMwareの仮想ディスク作成方法を比較【後編】

VMwareは仮想ディスクの作成方法として「シンプロビジョニング」を用意している。他の作成方法との違いは何か。シンプロビジョニングの仕組みと長所、短所を詳しく説明する。

2022年02月11日 05時00分 公開
[Stefani MunozTechTarget]

 仮想的なストレージである「仮想ディスク」の作成方法として、VMwareは「RDM」(RAW Device Mapping)と「シックプロビジョニング」「シンプロビジョニング」を用意している。作成方法を適切に選ぶことで、仮想マシン(VM)のストレージの利用効率を高めることができる。ただし作成方法によっては仮想ディスクのデータ書き込み速度の低下やリソースの無駄遣いなどの課題が生じる可能性がある。中編「『Lazy Zeroed』『Eager Zeroed』の違いとは? VMware仮想ディスクのシックプロビジョニング」に続く本稿は、シンプロビジョニングの特徴と、シックプロビジョニングとの違いを説明する。

「シンプロビジョニング」とは? 「シック」との違いは

会員登録(無料)が必要です

 シンプロビジョニングは、ストレージエリアネットワーク(SAN)を構成する物理的なストレージの領域を効率的に使用できるようにする。シンプロビジョニングで作成した仮想ディスクである「シンディスク」は、動作に必要な容量のストレージ領域のみを消費する。必要なストレージ領域は、ゲストOSがシンディスクに割り当てる入出力処理の量が増えるにつれて多くなる。例えば8GBのシンディスクを作成した場合、作成時に消費するストレージ領域は1GBだが、シンディスクで保存するデータ量が増えると最大8GBを消費する。

 状況によってVMが起動しなくなることがシンディスクの欠点として挙げられる。この状況は割り当て済みの最大容量に近い容量が、そのシンディスクを使用する複数の仮想マシン(VM)によって消費された場合に生じる。全てのシンディスクが割り当て済みの最大容量を消費すると、全てのVMが起動できなくなる可能性がある。VMを再び起動して使えるようにするには、ストレージを追加して仮想ディスク領域を拡張しなければならない。

 ストレージアレイでシンディスクを利用すると、ストレージの節約に役立つ。シンディスクは、割り当て済み最大容量を常に消費するのではなく、必要な容量しか消費しないため、仮想ディスクの用意にかかるコストの削減につながる。

選べるシックディスク、節約のシンディスク

 シックプロビジョニングで作成した仮想ディスク(シックディスク)とシンディスクは、よく似た機能を備えているが、異なる点もある。シックディスクは作成時点で必要な仮想ディスク領域の全量をストレージに割り当てる。一方のシンディスクは設定したストレージの最大容量に達するまで、必要に応じて仮想ディスクを割り当てる。

 2種類あるシックプロビジョニングのうちの1つである「Eager Zeroed」は仮想ディスク作成直後の書き込み速度は高速だが、仮想ディスクの作成には時間がかかる。もう1つの「Lazy Zeroed」はEager Zeroedディスクより迅速に仮想ディスクを作成できるが、仮想ディスク作成直後の書き込み速度はEager Zeroedほど高速ではない。

 シンディスクは仮想ディスク作成時点のストレージ領域を節約するのに最適な選択肢だ。シンディスクを使用するとVMの作成時に仮想ディスクの最大容量を多めに割り当てて、必要に応じてストレージを追加できる。しかしシンディスクが割り当て済み最大容量を消費する前にストレージを追加しないと、VMが起動しなくなる状況を招くことになる。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 SB C&S株式会社

仮想化環境のモダナイゼーションを加速させる、新しい運用管理方法とは?

さまざまなメリットをもたらす仮想化環境だが、2023年にVMwareが買収されたことで、ユーザー企業は難しい判断を強いられている。そこで、コストメリットも大きい、仮想化環境のモダナイゼーションの方法について解説する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

データ利活用基盤を強化:NTTコミュニケーションズのストレージ導入事例

データ分析・利活用のニーズが高まる中、アクションのベースとなるデータも膨大な容量となり、今後も増え続けていく見通しだ。そうなると、各企業はデータ利活用基盤として、信頼性や拡張性の高いストレージを求めるようになるだろう。

製品資料 横河レンタ・リース株式会社

Windows 11への刷新はデータ移行が重荷、作業負荷を大幅に軽減する方法とは?

OSの移行には「データ移行」が付き物だが、その業務負荷の高さに悩まされているIT管理者は多いだろう。Windows 11への移行を進める前に知っておきたい、「データレスPC」の有効性や、導入で得られる“プラスα”のメリットを解説する。

事例 ニュータニックス・ジャパン合同会社

サーバ250台の移行事例、東海理化が仮想環境を刷新した理由とその効果とは?

技術や市場の変化が激しい自動車業界にあって、長年、数多くの自動車メーカーに部品を供給してきた東海理化。同社は変化に柔軟に対応するためのDX推進に当たって、これまで運用してきたレガシー仮想環境からの移行を断行する。

製品レビュー ニュータニックス・ジャパン合同会社

クラウド同士の連携と運用の課題解消、WebスケールITの基準を採用した基盤とは

ハイブリッド/マルチクラウドへ移行する企業のIT環境だが、クラウド同士の連携は複雑な上に、運用も非効率になりがちだ。そこで、この問題を解消するためのハイブリッド/マルチクラウドプラットフォームを紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。