企業にとって生産性の向上はいつでも優先課題だ。建設業界は需要が高まる中、「IoT」と「5G」を使って現場業務の改善に取り組む。
世界の都市化の進展によって、建設業界の生産性向上が喫緊の課題として浮上している。調査会社Research and Marketsが2021年1月に公開したレポート「Growth Opportunities in the Global Construction Industry」によると、世界の建設市場は2023年までに4.2%の年平均成長率(CAGR)が見込まれている。この建設需要を満たすには、建設現場の生産性を高める必要がある。
建設業界の効率化を変えるのがIoT(モノのインターネット)だ。これに「5G」(第5世代移動通信システム)を組み合わせることで、さらに生産性を改善できる余地が生まれる。
5Gを使うことで、建設会社は機材を接続するネットワークをより高速かつ低遅延にすることができる。通信の長距離化も見込める。センサーなどのIoT機器と5Gを組み合わせることで、建設現場の低消費電力を追求することも可能になる。
例えば建設会社Bouygues Constructionは、フランスで使用する2万台以上の建設機材に長距離通信が可能なセンサーを取り付けた。これによって同社は各現場の機材の位置を追跡したり、遠隔で稼働状態を監視したりすることができるようになり、生産性向上の対策を積極的に打ち出すことが可能になった。
建設会社は生産性を向上させるだけではなく、現場の安全を確保することも求められる。その点も含めてIoTを活用できるポイントは3点ある。
生産性の向上は、建設業界が直面している最も大きな課題だ。特に「プロジェクトの遅延を回避したい」という要求の高まりが、IoT導入の引き金となっている。建設会社は目標のスケジュールを維持したいと考える。これは建設の遅れがコスト増につながるためだ。
IoTセンサーは機材の稼働状況や配送状況の確認に使える。現場管理者は機材の位置情報を集約する管理ツールのマップを表示して対象の機材の稼働状態を確認し、同じ管理ツールから品質管理シートを呼び出して記録を付けることができる。こうした活用法は、機材の検査などの日常的に発生する業務の効率化につながる。
安全は全ての建設現場における優先事項だ。作業員の健康と建設現場の安全がなければ、生産性の向上も目指せない。IoTセンサーを機材に取り付ければ、管理ツールのダッシュボードで作業環境の空気の質を調べたり、作業員が機械に近づき過ぎたときにアラートを発したりすることができる。こうしてリアルタイムでIoTセンサーのデータを監視することで、作業員は潜在的に危険な状況を回避可能になる。
建設現場における機材の盗難防止にもIoTが活用されている。遠隔で機材の位置を追跡すれば、現場を常に監視する必要がない。実は建設機材の盗難は珍しいものではない。そのためIoTによる盗難防止の対策は、建設会社にコスト節約の直接的な効果をもたらす。
電力と燃料のコスト抑制にもIoTの活用が効果的だ。これには燃料の使用量を検知するセンサーや、電力消費を検知するセンサーが役立つ。そうしたセンサーとネットワークをつなぎ、現場管理者は遠隔で機材の電源管理をいつでも実行できる。センサーが収集したデータを基に機材の状態を評価することで、在庫の不足や劣化による故障時期を特定することも可能になる。
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