新型コロナが投げ掛けるプライバシー問題【第3回】
政府主導の「新型コロナ接触確認アプリ」には何の意味があるのか?
人の行動や体温に関するデータを分析し、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止しようとする政府の試みには、プライバシー面の不安が伴うとの意見もある。各国はどう対処しているのか。
GoogleとAppleが2020年4月に発表した、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染者との接触を確認する技術開発に関する協業は、前向きに受け止められた。一方で厳しい目も向けられている。
2018年に「一般データ保護規則」(GDPR)を施行して強制力のあるプライバシー規制を敷いたEU(欧州連合)は2020年4月15日、接触確認アプリケーションの開発と利用に関するガイドラインを公表した。これは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いにおける接触確認アプリケーションの重要性を指摘するものだ。
各国が接触確認アプリケーションでやろうとしていること
このガイドラインは、欧州8カ国の科学者、技術者、専門家130人が構成するプロジェクト「Pan-European Privacy-Preserving Proximity Tracing」(PEPP-PT:汎<はん>欧州プライバシー保護近接追跡)が進める接触確認アプリケーション開発を紹介している。さらにGoogleとAppleのプロジェクトがGDPRに従っているかどうかを確認するため、明確化を追求するという。
EU加盟各国は、それぞれ独自の新型コロナウイルス感染症対策に着手し、接触確認と公衆衛生技術に対する独自のアプローチを模索している。
ドイツの公衆衛生研究所Robert Koch Instituteが、新興の医療技術ベンダーmHealth Pioneers(「Thryve」の名称で事業展開)と組んで開発するアプリケーションは、厳密に言えば接触確認アプリケーションではない。これはスマートウオッチを使ってエンドユーザーに新型コロナウイルス感染症の症状がないかどうかを予測するアプリケーションだ。エンドユーザーにオプトイン(事前許可)を求めた上で、睡眠スケジュール、日々の行動、心拍数のデータを収集し、症状の有無を判断する。エンドユーザーには一意のIDを付与し、収集した健康データと共にRobert Koch Instituteに送る。
シンガポール、中国、韓国などの国が接触確認アプリケーションを開発している。成果はまちまちだ。シンガポールは2020年3月、接触確認アプリケーション「TraceTogether」を公開した。同アプリケーションはオープンソースとして公開されており、同様のアプリケーション導入を望む国がソースコードを利用できるようになっている。これまでのところ、TraceTogetherはある程度の成功しか収めていないと言える。TraceTogetherユーザーが多い地域では機能している様子だが、国際ニュース通信社ロイターによればシンガポールで同年4月までにTraceTogetherをダウンロードしたのは5人中1人程度にとどまるという。
そうした政府による接触確認アプリケーション開発は、多少の成功を収められる場合がある。半面、こうした取り組みが成功するかどうかは、国民が政府を信頼しているかどうかに左右される。接触確認アプリケーション開発をはじめとする政府主導のプロジェクトは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を抑え、国民の安全を守る手段の一つにすぎない点は注意が必要だ。
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