Amazon Web Services(AWS)のオンプレミスハードウェアを再チェックAWS、MS、Googleのオンプレミスハードウェア【前編】

大手クラウドベンダー3社はオンプレミスハードウェアの提供やサポートを通じてハイブリッドクラウド戦略を推し進めている。まず3社のアプローチの違いとAWSの製品を紹介する。

2020年08月17日 08時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 クラウドコンピューティングはITを大きく変えた。だが、クラウドとオンプレミスは「二者択一」ではなく「相互に補完するもの」と考えられるようになっている。

 インフラをオンサイトに維持するのには正当な理由がある。特にこれに当てはまるのがストレージだ。その理由には、規制上の制約、遅延の最小化、アーキテクチャの互換性、既存の投資を活用したいという願望などがある。

 クラウドに投資するのにも正当な理由がある。スケーラビリティ、回復力、従量課金モデルに魅力がある。ただしGB当たりの価格は必ずしも安価になるとは限らない。

 オンプレミスとクラウド双方を最大限に生かす方法として、ハイブリッドクラウドやハイブリッドクラウドストレージに目を向ける企業が増えている。

 ハイブリッドクラウドストレージは、ストレージベンダーが実装する場合が多い。クラウドと自社のストレージ製品との互換性を確保し、クラウドを一つの層としてアクセス可能にする。現在はそれとは逆の方向に進み、大手クラウドの「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」(GCP)が顧客のオンプレミスにクラウド技術を広げている。

 クラウドベンダーの技術を利用すると、ITチームはローカルストレージとクラウドリソースの運用に同じインタフェース、管理ツール、プロビジョニングを使用できる。これに当てはまるのはコンピューティングとストレージで、主に仮想マシン(VM)かコンテナが利用される。

 クラウドベンダーの狙いは、ローカルITリソースの運用効率を高め、より容易にすることにある。

ローカルパフォーマンス

 アナリスト企業のIDCによると、クラウドベンダーをこの方向に駆り立てているのは「アプリケーションを複雑にすることなく、あらゆる場所にローカルのパフォーマンスをもたらすニーズ」と「あらゆる場所にクラウドを提供すること」だという(後編のコラム参照)。

 クラウドベンダーは、オンプレミスのハードウェア市場に参入することでクラウドサービス特有のパフォーマンス問題(遅延など)に対処しようとしている。ストレージの場合は、読み取りと書き込みのパフォーマンスの問題にも対処する。

 クラウドベンダーのハードウェアのユースケースには、パフォーマンスが重要なアプリケーションやデータをローカルに保管する必要があるアプリケーションなどがある。ユースケースの範囲は、エンタープライズアプリケーションから機密情報が関係する分析まで多岐にわたる。こうしたアプリケーションをクラウドストレージプールに接続すれば、古いデータのアーカイブや需要の急増への対処が容易になる。

 ただし、AWSとAzureはVMで、GCPはKubernetesコンテナでワークロードを運用する必要があるという制限がある。現時点ではまだベアメタルサポートはない。

大手3社のアプローチ

 購買担当者がベンダーを選択するに当たって、大手クラウドベンダー3社の全く異なるアプローチを把握する必要がある。

 例えば、Azureはオンプレミスサービスを提供する方法を2つ用意している。AzureとGCPは複数のハードウェアベンダーと複数のクラウドをサポートする。AWSは「AWS Outposts」を単一のベンダースタックと見なしている。Googleは2020年4月に「Anthos」でAWSをサポートすると発表したが、Azureはまだサポートしていない。「Azure Arc」も、ユーザーがサービスをAWSかGoogleのインフラにデプロイし、Azure Arcでそのサービスを管理できるようにする予定だ。

 これらの機能はまだ新しい。少なくとも現時点では、ストレージ管理者は複数のクラウドを使うよりも単一のベンダーと使い慣れたツールを利用することを推奨する。

AWS

 AWSはオンプレミスのオプションとして以下の3つを提供する。

  • AWS Outposts
  • AWS Storage Gateway
  • AWS Snow

 AWS Outpostsは、低遅延なサービスやローカルストレージを必要とするユーザーがAWSインフラにアクセスできるようにする。AWSによると、ハードウェアとツールは同社のクラウドサービスと同じだという。

 AWS Outpostsのハードウェアは、オンプレミスとクラウド双方の管理をできる限りシームレスにするため、顧客に最も近いAWSリージョンに接続される。AWS OutpostsのハードウェアはAWSコンソールで注文できる。AWSは、2020年にVMware製品互換バージョンのAWS Outpostsを追加する予定だ。

 AWS Storage Gatewayは、オンプレミスのハードウェアをクラウドに接続してハイブリッドストレージプールを形成する。AWSによると、バックアップやアーカイブなどのアプリケーションにAWSストレージへのアクセスを許可することで顧客のコスト削減を可能にするという。

 AWSにはテープ、ファイル、ボリュームという3つのゲートウェイがある。これらはVM内で運用することも、AWS Storage Gatewayアプライアンス経由で運用することも可能だ。AWS Storage GatewayのベースとなるのはDell EMCの「PowerEdge R640XL」で、10コアのIntel Xeonプロセッサ2基、128GBのメモリ、5TBのSSDを搭載する。

 AWS Snowファミリーを構成するのは、AWSへのデータ転送に使うアプライアンスだ。このファミリーには、80TBまたは42TBのブロックストレージを搭載する「AWS Snowball」、最大100PBまで転送可能なトラックを搭載するデータ輸送サービス「AWS Snowmobile」などが含まれる。AWS Snow機器を直接購入することはできない。費用は関連するAWSサービスのセットアップ料金に含まれる。

後編(Computer Weekly日本語版 8月19日号掲載予定)では、AzureとAnthosのハードウェア、識者による市場概観を紹介する。

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