AI技術によるコンテンツの自動要約や自動分類は、ビジネスに優れた力を発揮することが分かってきた。どのように役立つのか。医療、マーケティング、法務分野を例に、具体的な用途を探る。
AI(人工知能)技術が強みを発揮している応用領域の一つは、ドキュメントなど各種コンテンツの「自動要約」だ。コンテンツに含まれるテキストを広範に分析し、そのコンテンツを読みやすく要約することにより、重要な情報を抽出して、コンテンツを検索・分析しやすくする。AI技術は要約したドキュメントの「自動分類」も可能にする。自動分類は、請求書と契約書を区別したり、長いドキュメント内の特定のセクションを識別したりするなど、さまざまな目的に使用される強力な手段だ。
企業で利用される膨大な量のコンテンツを人の手で要約・分類することは極めて難しい。ここでAI技術の出番となる。AI技術はすでに日常的な業務に多大な影響を与えており、コンテンツを作成または分類するビジネスプロセスでも大いに役に立っている。
自動要約は、機械学習を使用して、コンテンツ内のテキストにパターンを見つけて識別する。その最初のステップは、どの情報が最も役立つかを評価する前に、テキストの内容を理解することだ。
コンテンツから価値のある情報を抽出するためには、コンテンツを分類する必要がある。コンピュータは、自然言語処理を使用してコンテンツをさらに分解することで、コンテンツを分類できる。コンテンツを素早くスキャンし、トレーニングデータに基づいてカテゴリーに分類するのだ。分類の例として、あるドキュメントが請求書なのかプレスリリースなのかを判断し、各ドキュメントを適切に並べ替えることがある。
2000年ごろから今までに、特にドキュメントの自動分類に関して多くの研究が生まれた。処理するドキュメントは一般的に、非構造化コンテンツだと見なされる。ドキュメントは事前定義された方法で整理されていないため、ドキュメントを分類するためのコンピュータプログラムを単純に構築することはできず、機械学習を使用する必要がある。
膨大な種類があり、さまざまな作成目的や形式があるため、ドキュメントの分類は非常に困難な場合がある。この難しさと機械学習の性質のため、ドキュメントの分類に関しては精度が100%に到達することはない。ただし一部の企業では100%に近づきつつある。
自動要約はさまざまな分野に適用できる。企業はコンテンツを短時間で要約するため、AI技術を利用した自動要約の採用を加速させている。自動分類と自動要約には重複する部分がかなりあるため、自動要約をコンテンツの分類にも利用できることがある。
医療分野でも自動要約がさまざまな方法で役立っている。診療所などの医療機関で、自動要約が医療文書の要約に利用され始めている。この自動要約は、医療文書を適切な医療専門家に送付するために使用される。例えば鼻の診療に関する医療文書の場合、医療機関の担当者は自動要約でこの医療文書を要約してから耳鼻咽喉科の医師に送る。
自動要約はマーケティングにも応用されており、長いコンテンツをより分かりやすいコンテンツに要約することに役立っている。要約された短いコンテンツは、特にソーシャルメディアのキャンペーンに有効だ。マーケティングの専門家は、AI技術を使用することで、より速くタスクを実行できるようになる。
法務の領域にも自動要約は浸透しており、法的な契約書の初期分析に利用されている。契約書は複雑な記述と用語を多用するため、読みにくい場合がある。自動要約によって生成された要約は、読み手が契約書の内容全体を理解できるようにするのに効果的だ。契約書に隠れた条項やリスクがあるかどうかを判断するためにも使用できる。
この他、検索エンジン事業者がコンテンツを整理し、検索結果に表示する簡単な要約を提供するためにも自動要約が利用されている。自動要約を使用してコンテンツ内のキーワードを抽出することもできる。同様に、企業や政府機関の内部で使用される検索エンジンも、膨大な量のコンテンツを短時間で整理し、検索に必要な情報を抽出するために使用されている。
研究者や新興企業、大企業の努力にもかかわらず、コンテンツの検索が困難なケースは依然としてある。コンテンツは常に驚異的な速度で生成され続けており、そのほとんどは構造化されていない。ただしAI技術を利用したコンテンツの自動要約は、大量のコンテンツの可視性と理解を向上させている。自動要約を使用してコンテンツを分析する機能により、組織はペタバイト規模のコンテンツを短時間で処理できる。
AI技術は従業員の仕事の効率化を支援し、従来であれば人員不足のためできなかった情報の処理を可能にする。マーケティング部門がより多くのコンテンツを生成できるようになるだけでなく、コンテンツ要約へのAI技術の応用は、今後数年間で多くの業界に価値を提供し続けるだろう。
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