今すぐ始めるべし
AI型サイバー攻撃に対抗する方法
AIを使ったサイバー攻撃は主流ではないが、いずれ犯罪者が活用するようになることは明白だ。こうした攻撃に対抗する方法とは何か。今すぐ始められることは何か。
長い間、サイバー攻撃の悩みは「起きるか起きないかではなく、いつ起きるか」の問題だと考えられてきた。
2018年には、クレデンシャルスタッフィング攻撃からランサムウェアに至る342件の侵害が行われ、28億の消費者データが漏えいし、推定損害額は6540億ドル(約69兆円)を超える。2019年には、漏えい件数が41億レコードに増加している。
AI(人工知能)をサイバー攻撃の主要ツールに利用する手口はまだ主流になっていない。だがツールの利用や機能は拡大され、より高度になっている。やがてサイバー犯罪にAIが利用されるのは避けられない。そうした動きはサイバー攻撃の大規模化や高度化につながり、脅威を増大させる。
AIはサイバー攻撃にさまざまな機会を与える。攻撃速度の向上や規模の拡大などの一般的なものから、属性や検出の難度化、信頼済みユーザーへのなりすまし、ディープフェイクなどの高度なものにまで広がるだろう。
ジョン・サイモール氏とフィリップ・タリー氏共作のツール「SNAP_R」は、シンプルだが的確なAIベースの攻撃の例を提示する。
AIが大量データを分析する能力は、特定の組織を標的として個別にそうした攻撃を作成できる可能性を高める。プロの犯罪者集団がAIを駆使すれば、組織のセキュリティ機能をしのぐ速度と完璧さでの攻撃が可能になる。
ただし、同じ手法で立ち向かうことで、AIが解決策の一端を担える可能性もある。2016年、米国国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は「Cyber Grand Challenge」(CGC)を開催した。CGCは、世界初の(人間の介入が許されない)完全機械式サイバーハッキングトーナメントだ。これは、欠陥を推論してパッチを作成し、リアルタイムでネットワークに展開する自動防御システムを作成するための競技会だ。この種の戦闘AIをサイバー防御の一部に利用することは、今後一般的になっていくだろう。
防御を強化する一つの手法として、機械学習の高度なパターンマッチング機能を展開する行動ベースの分析の利用が考えられる。
データアクセスについての適切な同意があることを前提として、ストリーミング、機器、従来のITインフラから入手できる豊富なユーザー行動データを基に、ユーザーの行動の細かい実態を提供できる。
特定の時刻にユーザーが使う端末(例えば午後10時に「iPad」を使う)、ユーザーが通常行うアクティビティー(午後10時に電子メールを処理)、ユーザーが対話する相手(午後10時にはテレビ電話はかけない)、ユーザーが通常アクセスするデータ(午後10時には共有ドライブにアクセスしない)といったことを判別できる。
このような機能は、高度にトレーニングされた機械学習システムによってリアルタイムに構築、管理、更新することが可能だ。通常のパターンから逸脱するパターンを分析し、サイバー防御メカニズムの展開を促すアラートを起動する。
行動データの活用は、従来型SIEMシステムでは慣例になっていた。ただし、AIはこれをさらなるレベルに押し上げる。適切な行動データの選択や、特定の脅威に合わせた時間やタスクのパターンのスライシングなど、事前に操作ルールを作成する必要はない。機械学習のアルゴリズムがこれを自動的に行う。この解決策では、周辺の行動のアクティビティーからデータポイントを取り込み、新たな脅威パターンの堅牢(けんろう)な証拠を提示することもできる。
ある大手グローバル銀行は、ニューラルネットワークを使って銀行外への接続が正当か偽装かを予測している。偽装接続は、侵害した端末でスヌープウェア(訳注:主にモバイル端末で情報を盗むスパイウェア)を使って接続を試みるか、ドライブバイダウンロードサイトへのリンクを提示する。これらは通常、バンキング型トロイの木馬サーバ攻撃など、高度なbotネットを利用して起動される。
ニューラルネットワークは、LSTM(Long Short-Term Memory)(訳注)を使って銀行によってトレーニングされ、URLやドメイン名を検証してその正当性を判断する。銀行は、27万を超えるフィッシングURLを使ってアルゴリズムをトレーニングし、botネットの検出などの攻撃に対する検出率を90%以上にしている。これは従来のサイバーセキュリティシステムを大きく上回っている。
訳注:RNN(回帰型ニューラルネットワーク)の一種で、時系列データによる分類や予測に適した手法。長期の傾向から今後の数値を予測する場合などに使われる。
思い過ごしではなく、攻撃AIは遅かれ早かれ全ての組織が対策の準備に入らなければならない問題だ。対策の方法や機能を見直すなら今だ。手遅れになると、後からさかのぼって見返すしかなくなる。
戦略を成功させるには、機能だけを開発して展開するのではなく、AIが組織にもたらす新しい対策をうまく生かせるように文化的なプロセスやガバナンスを変える必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] 取引先のセキュリティをどう管理する? 「SCS評価制度」対応の勘所を解説 -
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] SCS評価制度「★4」取得のカギ 最大の壁を突破する方法とは? -
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] 2026年度末から運用開始 「SCS評価制度」に備えて製造業がやるべきことは? -
事例
[ネットワンパートナーズ株式会社, アイビーシー株式会社] ハイブリッド環境の一元管理と快適な無線LAN環境、三井ホームはどう実現した? -
市場調査・トレンド
[TD SYNNEX株式会社] 調査で学ぶセキュリティ運用の実態 人を増やさず品質を維持する方法とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
5
“脱Excel”を待ち受ける乱立問題 カカクコムが新ツール導入を見送った理由
-
6
「WSUS」終了の時限爆弾 “本命”移行先ツールとMicrosoft提唱の新管理手法
-
7
VMware離れがやっぱり加速 2500台のVM移行に挑む製造大手から学ぶ現実解
-
8
「コピペ運用の限界」に直面するAI活用 7割超が“別画面”のまま使う理由は?
-
9
「ひとり情シス」が急に退職 専門商社が外部パートナーと挑んだネットワーク刷新の裏側
-
10
ベテランエンジニアが直面する危機 半数が「ブルーカラーへの転向」を視野に
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー