AI市場に押し寄せるM&Aの波【後編】
MicrosoftがApple「Siri」の開発元を買収 「AI企業買収」なぜ活発化?
AI分野でベンダー買収が活発化している。その背景には何があるのか。直近の買収傾向とアナリストの見解から読み解く。
MicrosoftはNuance Communications(以下、Nuance)を約200億ドルで買収すると、2021年4月に発表した(同年6月に米貿易規制当局が買収を承認)。NuanceはAppleの音声アシスタント「Siri」の開発を手掛け、あらゆる業界を横断して自然言語処理や音声認識、文書処理、画像認識の中核となる技術を提供している。
2021年5月上旬には機械学習ベンダーのDataRobotが、ノートブック形式のデータ可視化ツールを手掛けるZeplの買収を発表。同月下旬には20年以上にわたって自動車ドライバーのモニタリングシステムを開発してきたスウェーデンのSmart Eyeが、乗員の感情を認識できる車内感知システムを開発するAffectivaの買収を発表した。
MicrosoftのNuance買収だけではない AI企業買収が活発化する「2つの理由」
米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリストであるマイク・レオン氏は、AI分野のM&A活発化は「まだ始まったばかりだ」と指摘。「2つの分野からのM&A活動が平行して起きている」と解説する。
1つ目は、AI技術の導入から運用までのライフサイクル全体をカバーするポートフォリオの構築だ。特にレオン氏はMLOps(DevOpsの考え方を取り入れた機械学習モデルの開発手法)の分野に注目する。
「現代の組織にとってAI技術の導入は最大の頭痛の種だ」とレオン氏は語る。そうした課題を解決すべく、2020年前後に複数のベンダーが機械学習モデルの導入や管理を簡略化する新製品を市場投入した。それらの技術は「もともと新興企業が提供してきたものだ」と同氏は話す。例えばDataRobotのZepl買収は、AIシステム開発者の機械学習モデル開発を支援する効率的なツールを提供するという意味で、ここに当てはまる。
2つ目は、バーティカル(業種別)市場に照準を据えているAI専門企業だ。Affectivaはその代表例と言える。同社は主に自動車向けのコンピュータビジョン技術を開発している。
特定の業界で1つか2つの用途に照準を絞っている小規模なAI専門企業は「何百社もある」とレオン氏は指摘する。専門性の強いAIシステムの製品化に力を入れる大手ベンダーが、そうした企業と手を組んだとしても不思議はない。「極めて優秀な企業にはM&Aの大きなチャンスがあると私は見ている」(同氏)
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