小売り、製造、医療を中心とした5G導入【後編】
「触覚インターネット」とは? 「5G」が実現する医療、ヘルスケア業界の未来像
「5G」による通信で大きく変わる可能性がある業界が幾つかある。医療やヘルスケアの業界がその一つだ。具体的にどう変わるのだろうか。
「5G」(第5世代移動通信システム)は医療業界にも大きな変化をもたらすと考えられる。同業界のサプライチェーン最適化からリモート診断などの遠隔医療、電子医療記録(EMR)管理まで、さまざまな領域が5Gによって変わる可能性がある。
医療、ヘルスケアが5Gで変わる
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「5G」と「無線LAN」のセキュリティ比較
国際会計事務所/コンサルティング企業PwC(PricewaterhouseCoopers)は、5Gが多くの市場で大規模に導入されるのは、2025年以降になるとの見通しを示している。ただし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を受けて、その動きが早まる可能性もある。PwCは医療業界における5G導入の一例として、遠隔でのモニタリングを挙げる。例えば5Gの通信ができるデバイスを使い、病床利用率や病院内での医師や看護師、患者の移動、医療用のウェアラブルデバイスなどを追跡したり、モニタリングしたりする用途が考えられる。
より大きな変化が期待できるのは、ネットワークを介した触覚によるコミュニケーションや、インターネット経由で触覚を伝送する「触覚インターネット」が5Gによって実現することだ。
5Gが実現 「触覚インターネット」による次世代の遠隔医療
ITU(国際電気通信連合)は触覚インターネットについて、超低遅延や極めて高い可用性、信頼性、セキュリティといった要素を必要とすると説明している。触覚インターネットが実現すれば、医師は遠隔地にいる患者にほとんど直接的に処置を施すことも可能になる。
触覚インターネットを使った遠隔医療について、PwCは次のように説明している。「例えばある場所にいる外科医の動きを、別の場所にある機器によって瞬時に再現する。このイノベーション(技術革新)は、複雑な処置を専門とする外科医がすぐに訪問できない地方や小さな町の患者に、特に恩恵をもたらすだろう」
経営コンサルティング企業McKinsey & Company(以下、McKinsey)によると、ヘルスケア分野における5Gの活用は、2030年までに世界で2500億~4200億ドルのGDP(国内総生産)創出に貢献する見通しだ。
活気づくFWA
「固定無線アクセス」(FWA:Fixed Wireless Access)は、光ファイバーを使ったインターネットサービスと機能的に重複するとの批判を受けることがある。だがFWAは有線サービスを利用できない、または利用しないことを選択している世帯に、5Gによるインターネットサービスを提供することができる。その恩恵は決して小さくない。
通信事業者の業界団体GSMA(GSM Association)によると、FWAの主なメリットは光ファイバーによるインターネットサービスと同様の平均通信速度を、約4分の1のコストで実現できる点にある。「これまでインターネットに接続されていなかった世帯やコミュニティーも、高速で大容量の通信サービスのメリットを享受できるようになる」。2019年11月に発表したレポート「The Internet of Things in the 5G Era」で、GSMAは5Gが普及することの意味についてそう指摘している。
FWAを利用する場合、その顧客は新しいCPE(顧客構内設備)を必要とする。調査会社Counterpoint Researchによると、5GによるFWA用のCPE出荷台数は、2030年までに10億台を超え、2021~2030年のCAGRは47%となる見通しだ。
なぜFWAが5Gの主要な用途の一つになると予測できるのか。それは、5Gの根幹を成す「5G NR」(NR:New Radio)という通信規格があるためだ。5G NRは、「4G」(第4世代移動通信システム)の一種である「LTE」(Long-Term Evolution)を代替する規格に位置付けられる。5G NRは、映像のストリーミング配信や、大規模なM2M( Machine to Machine)通信において、光ファイバーと同等の高速通信を実現する。5G NRは、極めて低い遅延を要求するV2V(Vehicle to Vehicle:車両間)通信やV2I(Vehicle to Infrastructure:車両と路側機の間)通信にも利用できる。
2021年以降の5G
今後の5G市場において期待が持てるのは、インテリジェントモビリティに与える影響だ。つまりカーシェアリング、公共交通システム、V2VとV2I、物流など、移動や輸送に関する仕組みの進化が期待できる。先端技術を使って都市機能を向上させるスマートシティーで5Gを活用すれば、各種オペレーションの改善、人々の情報共有の促進、行政サービスの質と市民福祉の向上が進むと期待できる。交通の流れも改善できるだろう。
McKinseyはモビリティ分野で5Gの活用が進むことが、2030年までに1700億~2800億ドルのGDP創出に貢献すると推計している。
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