「5G」でスマート工場を造るEricssonやJohn Deere 無線LANはもう不要なのか?各業界で「無線LAN」を補う「5G」【前編】

無線LANに加えて、今後各業界は5Gを広く使うようになるとの見方がある。既に先進的な製造業は5Gの活用に着手している。その一例を見てみよう。

2021年07月12日 05時00分 公開
[Giacomo BernardiTechTarget]

 AI(人工知能)技術やブロックチェーンに並んで、「5G」(第5世代移動通信システム)は業界で最も注目されている話題の一つだ。5Gがその真価を発揮するようになれば、データ伝送の高速化や大容量化、低遅延化が実現し、全く新しいアプリケーション実現への道が開ける。確かに5Gは注目に値する技術だが、まだ登場したばかりだ。

 「5Gが『無線LAN』を代替する」という見方が存在する。この主張に根拠はない。大学のキャンパスや病院から、標準規格「IEEE 802.11」準拠の無線LANの機器が消え、5Gが代替している状況を想像できるだろうか。それは非現実的な話だ。

 現実的には、無線LANと5Gは当面の間は共存する。ユーザーはそれぞれ異なる用途に使用すると同時に、併用することになるだろう。5Gが無線LANを補う実例として、各業界の取り組みを紹介する。

5Gがスマートファクトリーの主要手段に 無線LANはどうなる

会員登録(無料)が必要です

 製造業は5Gの影響を大きく受ける業界の一つだ。5Gが製造業における次の産業革命を引き起こす可能性がある。工場における無線ネットワークとしては無線LANが一般的だ。一方では5Gが下支えする「スマートファクトリー」(生産機器をネットワーク接続することで生産効率を高める工場)の波が到来している。調査会社Capgemini Research Instituteの報告書「Smart Factories @ Scale」によると、スマートファクトリーは2023年までにGDP(国内総生産)を年間1兆5000億~2兆2000億ドル押し上げる可能性がある。そのチャンスは絶大だ。

 5Gは製造業に多大な恩恵をもたらす。モバイルデバイスやロボットを5Gに接続して利用すれば、生産プロセスの自動化促進や製造効率の向上につながる。例えばテキサス州ルイスビルにある、通信機器ベンダーEricssonの工場は5Gを活用している。この工場では、組み立てや梱包(こんぽう)といった時間のかかる生産プロセスに、ドローンや自律走行するカートを使用している。

 「John Deere」のブランド名で知られる農業機械ベンダーのDeere & Companyは、工場の生産効率を高めるために約50万ドルを投資して5Gのプライベートネットワークを導入した。同社が5Gを活用するのは、従来の有線ネットワークよりも製造ラインの生産性を高めることができるからだ。同社は従業員の安全性を確保するために、工場の稼働状態を可視化するシステムにも5Gを活用している。

 こうした活用例が出てきている一方で、製造業が導入しているその他の無線ネットワークを全て5Gに置き換えることは困難であり、その必要もない。特に無線LANは、工場で使うための無線ネットワークの現実的な選択肢として、幅広い企業のニーズを満たしている。

 今後起こる可能性が高いシナリオは、工場が無線LANと5Gを併用することだ。企業は用途や必要になる帯域幅のニーズに従って、無線LANと5Gをそれぞれ利用する方法を採用すると考えられる。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 NTTドコモビジネス株式会社

5つの事例に学ぶ、多店舗ビジネスにおけるネットワーク運用課題の解消方法

多店舗展開を行う企業では、ネットワークの構成や運用ルールが店舗ごとに異なるケースが多く、管理の煩雑さや故障発生時の対応遅延などの課題を抱えがちだ。このような課題の解決策を、5つの事例から探る。

製品資料 NTTドコモビジネス株式会社

出社したのに接続できず遅刻? インターネット回線のトラブルをなくすには

「出社しているのに業務クラウドに接続できず打刻ができない」「オンライン会議が落ちてしまう」など、インターネット回線に関するトラブルは今も後を絶たない。そこで注目したいのが、法人向けに設計された高速インターネットサービスだ。

事例 NTTドコモビジネス株式会社

通信回線の逼迫をどう乗り越えた? 建設現場におけるネットワーク最適化事例

建設現場では、データの大容量化に伴う通信回線の逼迫が業務の障壁となるケースが増えている。本資料では、ネットワークの再構築により通信環境を最適化し、意思決定の迅速化や安全対策の高度化を実現した企業の事例を紹介する。

事例 NTTドコモビジネス株式会社

OS更新時の帯域逼迫とセキュリティ課題を解消、事例に学ぶネットワーク刷新術

セキュリティ対策に不可欠なWindows Updateだが、複数店舗・拠点を構える企業では回線が逼迫する要因であり、業務の停滞につながる大きな問題だ。あるアパレル小売チェーンの事例から、ネットワークの抜本的な改善策を紹介したい。

製品資料 NTTドコモビジネス株式会社

IT人材がいなくても大丈夫、工事不要で高速なWi-Fi環境を構築する方法

Wi-Fi環境は、業務の効率化や柔軟な働き方を支える重要な存在だ。しかし、従来の固定回線型Wi-Fiには、工事の手間や設置の制約といった課題がつきまとう。そこで注目したいのが、工事不要で導入できるWi-Fi製品だ。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...