企業の間では、どのような場合に「Azure Virtual Desktop」ではなく「Windows 365」を選ぶべきなのかが分かりにくいとの声がある。両者の違いはそれほど大きくないように見えるが、本当にそうなのか。
Microsoftは新たなDaaS(Desktop as a Service)である「Windows 365」の提供を開始した。Microsoftのもう一つのDaaSである「Azure Virtual Desktop」ではなく、Windows 365の方を選ぶべきなのかどうかの判断を巡り、企業の間に混乱が生じている。
「Windows 365とAzure Virtual Desktopの間には幾つかの違いがあるものの、企業にとってはどのような場合にどちらを使うべきかがはっきりしない」。仮想デスクトップ管理企業Adar(Nerdioの名称で事業展開)のバディム・ブラディミルスキーCEOはこう指摘する。Windows 365発表以来、「どう比較すべきか、違いは何かといった多くの疑問が生じている」とブラディミルスキー氏は話す。
Microsoftは2021年7月にWindows 365を発表し「ユーザー企業が物理的なPCのように利用して管理できる仮想デスクトップ」として売り込んでいる。この表現を理由に、一部の企業はWindows 365をAzure Virtual Desktopの簡略版だと見なしている。本当にその認識は正しいのか。
システムインテグレーションを手掛けるModality SystemsのITアーキテクト、トム・アーバスノット氏は、「Windows 365はAzure Virtual Desktopをベースに、使いやすくなるように新しい形でパッケージ化されたものだ」と話す。
2021年8月に提供が始まったWindows 365は「Windows 365 Enterprise」「Windows 365 Business」の2種類のプランがある。Microsoftは、会社が管理するPCの代替としてWindows 365 Enterpriseを位置付ける。Windows 365 Businessは、Best Buyをはじめとする小売店でPCを購入する個人や中小企業向けだ。
Windows 365では、各エンドユーザーはAzureベースの個別の仮想マシンを専有し、それぞれの仮想マシンで仮想デスクトップを利用できる。Azure Virtual Desktopではこれに加えて、複数のエンドユーザーが単一の仮想マシンを共有して、仮想デスクトップを利用する「Pooled」(プール型)も選択可能だ。
プール型はセキュリティ対策にも役立つ。プール型では、エンドユーザーはそのままの状態で仮想デスクトップを使わなければならず、アプリケーションをインストールしたり、設定を変更したりすることは基本的にできない。
Windows 365 Enterpriseでは、ユーザー企業はエンドポイントセキュリティ/デバイス管理ツール群「Microsoft Endpoint Manager」を通じて仮想デスクトップを管理する。Windows 365 Businessは、標準ではMicrosoft Endpoint Managerのライセンスを含まない。IT担当者は、Azureの全サービスを制御する一元管理コンソールの「Azure Portal」経由でAzure Virtual Desktopを管理する。ブラディミルスキー氏は「仮想デスクトップの管理機能はAzure PortalよりもMicrosoft Endpoint Managerの方が優れている」と評価する。
MicrosoftはWindows 365にユーザーベースの料金体系を設定しており、そちらの方がAzure Virtual Desktopの従量ベースの料金体系よりもコストが予想しやすい。後者は利用状況に応じて月ごとに変動することがある。「Azure Virtual Desktopの方がコストの予想がしにくい。それを恐れて現時点ではAzure Virtual Desktopを選ばないユーザーもいると考えられる」とブラディミルスキー氏は推測する。
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