ZoomがFive9買収計画を発表したことで、コンタクトセンターシステム市場に「魅力的な巨大企業が誕生する」とアナリストは期待を寄せる。コンタクトセンターを持つ企業が求めるニーズに、この2社はどう応えるのか。
Zoom Video Communicationsは、コンタクトセンターシステムのクラウドサービス「CCaaS」(Contact Center as a Service:サービスとしてのコンタクトセンター)を提供するFive9を147億ドル(約1兆6000億円)で買収し、この市場で名乗りを上げようとしている。
カスタマーサービス担当者がテレワークをしていても今まで通りの顧客対応を可能にするために、CCaaSの導入が進んでいる。この動向を受け、Zoom Video Communicationsは2022年上半期にFive9を買収する計画を、米国時間の2021年7月18日(現地時間)に発表した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で、コールセンター担当者はテレワークを余儀なくされ、リモート顧客対応の需要が高まった。その結果「既に始まっていたCCaaSへの移行がさらに加速することになった」と、コンタクトセンター向けコンサルティング会社であるTaylor Reach GroupのCEO、コリン・テイラー氏は言う。同氏によると、同社が従事しているプロジェクトの約95%は、オンプレミスのコールセンターシステムではなく、CCaaSを導入している。
テイラー氏は、かなりの割合のコンタクトセンターが「ハイブリッドワーク」(従業員の必要に応じてテレワークやオフィス出社を使い分ける働き方)を導入すると予測している。コンタクトセンターの担当者が出社するのはトレーニングや従業員教育などのときだけになると同氏はみる。
ITリセラーTelecom Brokerageでエンジニアを務めるジョー・フィザー氏は、同社にオンプレミスのコンタクトセンターシステムを依頼した顧客は過去18カ月で1社だけだったと話す。CCaaSの利点であるCRM(顧客関係管理)製品との連携やテレワーカー用の機能などがCCaaSへの移行を後押ししているという。「オンプレミスのコンタクトセンターシステムは、もはや過去のものになりつつある」とフィザー氏は語る。
とはいえ、まだCCaaSに移行していないコンタクトセンターは多く、そこには大きな市場がある。調査会社Forrester Researchのアナリストを務めるアート・シューラー氏によると、CCaaSはコンタクトセンターシステム全体の約25%にすぎず、残りの約75%にとってZoom Video CommunicationsとFive9の組み合わせは魅力となる。
コンタクトセンターの間では、汎用(はんよう)的なコミュニケーション手段を複数組み合わせる「ユニファイドコミュニケーション」(UC)システムのクラウドサービス移行も進みつつある。コンタクトセンターを持つ企業は概して、UCシステムのクラウドサービス「UCaaS」(Unified Communications as a Service)と、CCaaSの両方を1社のベンダーに集約したいと考えている。「CCaaSとUCaaSの両方を提供していないベンダーは不利であり、UCaaSのないFive9は他社と提携しなければ競争に負けてしまう」とテイラー氏は予測する。実際、それが理由でFive9が候補から除外されたケースも見聞きしたという。
フィザー氏は、企業がCCaaSとUCaaSの両方を単一ベンダーにしようとするのは「ロジスティックにおける理由が多い」と言う。単一ベンダーにする方が複数ベンダーの製品を連携させるより時間を短縮でき、利用料金の支払いも簡素化できる。「請求をまとめることができれば、ユーザー企業には喜ばしい」(同氏)からだ。
「Zoom」と「Five9」という認知度の高いブランドが1つになることはユーザー企業にとって魅力であり、「強大なモンスター企業が誕生することになりそうだ」とフィザー氏は話す。
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