「大規模クラウド」のストレージ設計も夢ではない IT担当者が盗むべき運用術「ハイパースケールクラウド」から学ぶ【第2回】

ITインフラをソフトウェアで制御する流れはストレージにも広がっている。一般企業はハイパースケールクラウドに倣い、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)を活用することでさまざまなメリットを得ることができる。

2021年10月21日 05時00分 公開
[Kurt MarkoTechTarget]

 大規模データセンターで稼働する広範なクラウドサービス群「ハイパースケールクラウド」。一見して遠い存在に見えるハイパースケールクラウドからユーザー企業が学べることは、実は多彩だ。第1回「一般企業もまねしたい『大規模クラウド』の設計・運用ノウハウとは?」に続き、第2回となる本稿はストレージの設計や管理を最適化するためのヒントを探る。

 第1回はハイパースケールクラウドの事業者とユーザー企業の共通点を取り上げた。もちろん両者には相違点もある。ユーザー企業の大半は、IT担当者が手作業でシステムを管理したり変更したりしているため、人件費がかさむ課題を抱えている。ユーザー企業が使うサーバやストレージといったハードウェアは、拡張性を欠いていることがほとんどだ。その結果、ユーザー企業はビジネスの状況に合わせたシステムの拡張や縮小がしにくくなり、高コストにつながってしまう恐れがある。

 こうした課題を抱えるユーザー企業こそ、ハイパースケールクラウドの事業者から学べることがある。例えば、以下で紹介する「6つのポイント」に取り組むことでシステムの最適化を図れる。

1.ソフトウェアをフル活用する

 ITインフラの分野には仮想化という大きな流れがある。サーバを中心に、ハードウェアの物理リソースをソフトウェアによって抽象化する技術が使われるようになった。今や仮想マシン(VM)は、企業でアプリケーションを実行するための標準インフラになっている。VMに続いてコンテナも使われるようになった。ソフトウェア定義ネットワーク(SDN:Software Defined Network)も登場し、ソフトウェアによってネットワークを仮想化し、構築できるようになった。

 ハードウェアに依存しない流れはストレージにも広がり、ソフトウェア定義ストレージ(SDS:Software Defined Storage)を生み出した。SDS製品はもともと、「ブロック」(記憶領域を論理的に分割した単位)を動的に拡張するなど、特定の仕組みで設計されていた。最近のSDS製品は特定のストレージ形式に依存せず、複数のサーバで単一の論理ボリュームを構成し、容量を増やしたり、ファイル共有ができるようにしたりしている。

2.「インフラ」ではなく「サービス」を構築する

 ソフトウェアによる抽象化はリソースをハードウェアから切り離し、さまざまなハードウェアを組み合わせられるようにする。これにより、企業はリソースを「サービス」として提供できる。SDSを活用すれば、データ容量の増加はもちろん、バックアップや長期アーカイブ、バージョン管理といった“付加価値”を付けることが可能だ。これに関して、ユーザー企業はハイパースケールクラウドの事業者に倣うべきと言える。

 インフラをサービス化することで、性能のアップグレードがしやすくなる、システム設計や関連サービスをひとまとめにして提供できる、といったメリットが見込める。他にも、性能の異なるサーバを複数のデータセンターに分散させ、システムの可用性を高めることにもソフトウェアによる抽象化が役立つ。


 第3回は、自動化を目指した設計と、故障への備えを紹介する。

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