VMの稼働にかかるコストを見積もるには、適切な方法で計算する必要がある。コストに大きく影響する要素が、VMの稼働に利用する物理サーバのリソース量だ。その計算方法を説明する。
第1回「仮想マシン(VM)の『固定費』『変動費』とは? 総コスト見積もりの第一歩」は、データセンターの物理ハードウェアとソフトウェアの導入や運用にかかる総コストを計算した。次はこのインフラで仮想マシン(VM)を動かすために利用できるストレージ容量を決めなければならない。第1回で例に挙げた10台の物理サーバと1台のストレージアレイを備える条件だと、ストレージアレイが最大512TBのストレージ容量を提供することは既に分かっている。
加えて実効サーバ数も把握する必要がある。実効サーバ数は、物理サーバの総数から冗長サーバの台数を減算させた数になる。冗長化していない物理サーバが10台あるのなら、使用可能な物理サーバ総数は10台だ。例えばワークロード(アプリケーション)のレジリエンシー(回復力)を高めるために、3台を冗長サーバとして利用するとしたら、実効サーバ数は7台になる。
物理サーバ1台当たりに使用可能なメモリとプロセッサの合計量にも注意する。これらの値は各物理サーバの技術仕様書から確認できる。本稿の条件であれば、物理サーバ1台当たり2TBのメモリを含み、2.3GHzで稼働する12コアのプロセッサ2基(合計24コア)を搭載する。
メモリとプロセッサのうち、予約目的で確保する割合と、オーバーコミットを目的に確保する割合も把握する。予約目的のリソースは、将来の拡張やパフォーマンス管理のために利用可能なリソースを指す。一方でオーバーコミットはリソースの使用率を最大限に高める方法になる。全てのVMが確保済みの全リソースを常時使用するわけではないことを認識するのも重要だ。これらの容量を把握することはコストに影響する。
本稿の条件では、メモリの予約済み容量が15%、オーバーコミット容量が5%。プロセッサの予約分が15%、オーバーコミット分が60%だ。以下の表は10台の物理サーバのうち、これらの条件を満たした7台の実効サーバがあると仮定し、利用可能なリソース量を示している。本稿はネットワークの帯域幅(回線容量)を考慮していないが、企業によってはコスト要素として検討対象になる可能性がある。
リソース | サーバ1台当たり | 予約 | 利用可能 | オーバーコミット | サーバ1台当たりの合計 | グループ合計(注) |
---|---|---|---|---|---|---|
メモリ容量 | 2048GB(2TB) | 15% | 1740.8GB | 5% | 1827.84GB | 12794.88GB |
プロセッサ数 | 24 | - | 24 | - | 24 | 168 |
クロックサイクル | 2.3GHz | 15% | 1.955GHz | 60% | 3.128GHz | 21.896GHz |
次回はIT部門がVMの稼働に必要なコストを適切に見積もる方法を説明する。
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