オフィスワークの自動化やコラボレーションツールを活用した「インテリジェントワークプレース」は、業務効率化に貢献する技術だ。ただし「導入すれば従業員が幸せになるとは限らない」と懸念を示す専門家もいる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大をきっかけに、仮想化や自動化、遠隔会議などの技術の普及が人々の働き方を変えつつある。ただし「インテリジェントワークプレース」を生み出すための新しいツールの採用は、常に良い方向へ向かうとは限らない。インテリジェントワークプレースは、デジタル化と自動化の進んだオフィスの業務プロセスの総称だ。
自動化技術は従業員の業務効率を高めるとベンダーは主張する。しかし調査会社Deep Analysisの設立者兼プリンシパルアナリストのアラン・ペルツ・シャープ氏によると「そのようなツールがあると、従業員は雇用主を一層警戒するようになる」と語る。「認めたくないかもしれないが、職場の自動化技術の大半は単純に人を排除するために設計されている。従業員はこれに大きな疑念を抱いている」(ペルツ・シャープ氏)
ペルツ・シャープ氏は、2021年10月開催のSimpler Media Group主催イベント「Digital Workplace Experience」に登壇し、前述のテーマで講演した。同イベントで別のパネリストは、インテリジェントワークプレースを「従業員の好みに応じて設定できる、デジタル接続のオフィス」と定義していた。
業界のエキスパートによるパネルディスカッションの場では、インテリジェントワークプレースが強く求められていることで意見が一致している様子だった。パネリストの一人であるコンサルティング企業Deloitte Consultingのマネージングディレクター、ギーティカ・タンドン氏は「企業はインテリジェントワークプレースを構築しようと、集中的な取り組みを進めている」と語る。
タンドン氏によれば、インテリジェントワークプレースは従業員を感情面や運用面でサポートし、「従業員エクスペリエンス」(従業員体験価値)の改善に役立つ可能性がある。企業は「大量退職時代」に備えて、インテリジェントワークプレースに関する集中的な取り組みを進めているという。同氏の言う「大量退職時代」とは、コロナ渦における高い離職率を指している。
従業員エクスペリエンス向上のために技術を活用することは「慣行や人を変えるよりも実施しやすい」とタンドン氏は語る。ただし、それは事務処理部門での話だ。「自動化技術は求人面での脅威になる」とペルツ・シャープ氏は反論する。
コロナ禍以前は、ソフトウェアロボットによるプロセス自動化技術である「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)を導入する動きが目立っていた。「RPAはルーティン業務を自動化するものであり、従業員エクスペリエンスを改善するためであったことはほとんどない」とペルツ・シャープ氏は語る。
同イベントでは、Wharton School of the University of Pennsylvania(ペンシルバニア大学ウォートン校)の組織心理学者であるアダム・グラント氏が、遠隔会議をテーマに挙げて講演。「ビデオ通話は、労働者を居心地悪くさせる可能性がある」と語った。
「自分の顔が他の人に見られていることが分かると、自分の外見に対する不安が高まり、気持ちが乱れる」とグラント氏は説明する。女性や新入社員の場合は特に大きなストレスを感じるという。人が何を感じているかについては、声のトーンの方が「純粋で信頼できるシグナル」だと同氏は主張する。
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