教職員と生徒間の連絡に「Talknote」を利用 聖徳学園が“国産”にこだわった理由教育機関の“校内SNS”活用【前編】

聖徳学園中学・高等学校は教職員と生徒、保護者間の連絡にコミュニケーションサービスの「Talknote」を採用している。Talknoteの採用に至った理由と、ITツールの普及のために同校が取り組んだ施策は。

2022年03月29日 05時00分 公開
[上田 奈々絵TechTargetジャパン]

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 私立中高一貫校の聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市)では、学習や連絡のための端末として、全校生徒がAppleのタブレット「iPad」を購入する。同校は教職員には1人1台のiPadを貸与し、業務で利用できるようにしている。同校はiPadの導入後、コミュニケーションツールとして2015年にTalknoteの同名サービスを導入。iPadとTalknoteを組み合わせ、教職員と生徒、保護者間の交流や情報共有に利用している。

 ITツールを活用したコミュニケーションを定着させるために、聖徳学園はどのような取り組みをしているのか。同校でIT活用を推進する責任者に聞いた。

 聖徳学園でITシステムの導入や管理などを担当するのは、同校の卒業生で最高情報セキュリティ責任者(CISO)を務める横濱友一氏と、情報システムセンター長を務め、情報科の授業を担当する鶴岡 裕一郎氏だ。2015年4月のiPad導入を機に、横濱氏は同校専用のソーシャルネットワーキングサービス(以下「校内SNS」)の構想を立てた。「iPadを活用した教職員の業務改善に加えて、教職員と生徒、保護者のコミュニケーション活性化に、有効な手だてとなるのが校内SNSだと考えました」(横濱氏)

国産のコミュニケーションサービスを利用したい――学校ならではの事情

写真 聖徳学園 横濱友一氏

 横濱氏は校内SNSの実現に当たり、国内にある複数のコミュニケーションツールベンダーに相談した。ITインフラの管理が必要なく、利用者数が大幅に変化してもコスト管理がしやすいことを踏まえて、クラウドサービスであることを選定の条件にした。中でも同氏は国産サービスにこだわった。その理由は、海外の教育機関向けツールでは日本の法律や習慣とのミスマッチが生じる可能性がある点だ。

 海外の製品やサービスは海外の法規制に準じて設計されているため、未成年の利用時に機能制限が設けられる場合がある。例えば米国のベンダーが提供するサービスはCOPPA(児童オンライン保護法)に基づいており、エンドユーザーの年齢制限がある。そうした背景から、聖徳学園は国産サービスに選択肢を絞った。

 「国産サービスであれば日本語できめ細かいサポートが受けられ、問い合わせ時に迅速に問題解決をしてもらえるのではないかと考えました」と横濱氏は話す。「日本特有のコミュニケーションに役立つ機能が利用できるのではないかという期待もありました」と同氏は言い添える。

 機能更新に伴うサービスの停止やバグの少なさも重視した。災害時や感染症拡大時などの学校運営に関わる重要な連絡に利用することを想定していたためだ。

 Talknoteを採用した決め手として、横濱氏は「比較検討していた国内のコミュニケーションツールベンダー各社の中で、問い合わせ時の回答が非常に早かった」ことを挙げる。機能も過不足なく、

  • 特定の相手とチャット形式でやりとりできるメッセージ機能
  • グループに所属するメンバー全員に掲示板形式で情報共有ができるグループ機能
  • 画像と動画の共有機能
  • 直観的に操作できるユーザーインタフェース

を備えることも採用を後押しした。Talknoteはアプリケーションの障害発生時も無停止で稼働できるように高可用性(HA)に配慮して設計されており、利用中にサービスが停止する可能性が低いと同校は判断した。

教職員にITツールを普及させるための工夫とは

 聖徳学園はまず、教職員間の連絡にTalknoteを導入したが、ある課題に直面した。教職員に貸与したiPadにTalknoteのアプリケーションをインストールしても、積極的に利用しようとする人がほとんどいなかったのだ。

写真 聖徳学園 鶴岡 裕一郎氏

 Talknoteが活躍できそうな状況を探るために、横濱氏は教職員同士のコミュニケーションの実態を具体的に調査した。そこで浮かび上がってきた課題が、養護教諭と教員のやりとりだった。

 養護教諭は生徒が保健室に来室したら、体調や状況を学級担任に報告する必要がある。生徒が早退することになったら、その旨も学級担任に伝えなければならない。従来はこうした口頭連絡のために養護教諭が学級担任を探して会いに行く必要があり、時間と手間がかかっていた。

 横濱氏はこうした課題を踏まえて養護教諭に対し、学級担任への連絡にTalknoteを使うことを提案した。結果として養護教諭は、生徒の様子に関する学級担任への口頭連絡をTalknoteに置き換えたことで、より生徒の健康管理に専念できるようになったという。

 この取り組みをきっかけに、教職員は日々の情報共有に積極的にTalknoteを活用するようになった。「落とし物情報の共有」といったTalknoteの利用が適したグループを、横濱氏と鶴岡氏が先行して作成しておいたことも、教職員への普及につながった。

 学年ごとに学級担任が集まる学年会議といった、対面で実施していた会議も、現在はTalknoteに移行している。従来は紙の回覧板共有していた情報も全てTalknoteのグループ機能に置き換えることで、必要な情報を関係者全員に一斉通知できるようになった。


 こうした成果を受け、聖徳学園は生徒や保護者とのコミュニケーションにもTalknoteを採用するに至った。中編は、生徒と保護者におけるITツールの利用状況を説明する。

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