NVIDIAによるArmの買収は失敗に終わった。各国の規制当局やベンダーは、この案件の発表後から懸念を示していた。何が取引の成立を阻んだのか。
半導体大手NVIDIAによる同業Armの買収は、破談に追い込まれた。Armを傘下に収めているソフトバンクグループは2022年2月8日、「規制上の課題」を理由に、NVIDIAとの400億ドル相当の売却契約を解消すると発表した。代わりに、Armは2023年3月までに上場を目指す。契約の発表後に何があったのか。
NVIDIAによるArm買収は、2020年9月にソフトバンクグループとNVIDIAの両社から発表された。その直後から、英競争市場庁(CMA)や米連邦取引委員会(FTC)など各国の政府機関が、公正競争を阻害する可能性について調査に乗り出した。
Google、Microsoft、Qualcommなど、Arm製品を調達しているITベンダーは懸念を表明した。もしこの取引が成立すれば、さまざまなベンダーが採用している「Armアーキテクチャ」(Armによるプロセッサの設計)が、NVIDIA単独の支配下に入り、従来通りの公正な取引ができなくなる可能性があるからだ。Amazon Web Services(AWS)やHuawei Technologies、Appleといった大手ベンダーもArmアーキテクチャを採用している。
調査会社Forrester Researchの調査ディレクター、グレン・オドネル氏は、「国境をまたいだM&A(合併・買収)案件に対して、規制当局の監視が強まる傾向にある」と解説する。米国ではジョー・バイデン大統領が、公正競争に反する取引の取り締まりを強める姿勢を示し、それを受けてFTCは監視の強化や合併ガイドラインの見直しに着手した。
今回のArm買収案件に関して、FTCは2021年12月に取引の阻止を求めて訴訟を起こした。一方、英国やEU(欧州連合)は、取引を阻止するために米国以上に強い圧力をかけたとオドネル氏は言う。特に英国は、プロセッサ設計の世界大手であるArmを国内にとどめておきたい意向だった。半導体不足の問題が世界中で続く中、国内製造がより重要になりつつあったからだ。
「サプライチェーンが脆弱(ぜいじゃく)になったことで、製品供給において世界の地理的バランスを取る必要性は薄れている」とオドネル氏は指摘する。
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