コロナ禍に伴うテレワークが長期化して、オフィス回帰を切望する従業員がいる。一方で、入社後はテレワークしかしておらず、初めての出社を不安に思う新人もいる。今後、オフィス回帰を進める上で留意すべき点は。
本連載は、Web会議デバイスベンダーPlantronics(Polyの名称で事業展開)が発表した調査レポート「Evolution of the Workplace」(注)を基に、オフィスワークとテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」のメリットとデメリットを紹介してきた。後編となる本稿は、従業員がオフィス回帰へ抱く期待と不安、企業がオフィス回帰を進めるときに留意すべきポイントを紹介する。
※注:従来一般的だった「午前9時から午後5時までの勤務形態」に対する従業員の考え方の変化と、オフィスの役割の変化に関する調査レポート。分析は2021年8月に調査会社Censuswideが実施したオンラインのオムニバス調査に基づく。調査対象は、世界7カ国のハイブリッドワーカー7261人。調査対象国は、英国、フランス、ドイツ、ポーランド、スウェーデン、スペイン、アラブ首長国連邦。
調査レポートによると、回答者はオフィス回帰に対して非常に複雑な感情を持っている。回答者は概して「同僚やクライアントと対面することで生じる仲間意識やつながりがなくなるのは寂しい」と考えているものの、テレワーク制度の終了によって自分のパフォーマンスが損なわれることに不安を感じている人もいた。回答者の64%は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で「オフィス文化はすっかり変わった」と答えている。Plantronicsは、パンデミックによるオフィス文化の変化が回答者に定着しているのは明らかだと指摘する。
「この先どのようにオフィスを利用するか」を尋ねた設問では、実務指向の傾向が見えた。オフィスへ戻る理由の上位3つは、「同僚とのブレーンストーミング、協働」「ミーティングへの参加」「より良い設備やITツールの利用」だった。
調査レポートは、従業員がオフィスワークへの復帰に不安を抱いていることや、テレワークが若手の従業員にもたらした影響についても触れている。回答者の約4割は、オフィスの移転か、パンデミック期間中に入社したかという理由で「新しいオフィスに行っていない」と答えている。この割合は18〜24歳では62%まで上昇した。18〜24歳でオフィスにまだ行っていない回答者の72%は、「初めての出社を考えると夜も眠れない」と答えた。
「オフィスの役割、従業員の利用目的は変わりつつある」と、PlantronicsでEMEA(欧州、中東、アフリカ)セールス担当シニアバイスプレジデントを務めるポール・クラーク氏は話す。クラーク氏によれば、従業員はテレワークをするようになってから人との交流を切望するようになっており、オフィスに戻るのを楽しみにしている。ハイブリッドワークの利点を引き出すために「企業は人と技術、スペースの問題を念頭に置いておく必要がある」と同氏は指摘する。
具体的には、企業は第一に従業員の社会的人格と勤務スタイルを理解する必要がある。第二に「未来のオフィス」にどれくらいの広さが必要かを明確に定義する。例えば「静かに働くためのエリアや、チームで協働するためのエリアを増やす必要があるか」といった内容を検討する。「こうした内容を検討することで、従業員がより幸せに、より生産的に働けるようにするための技術的な要件をさらに理解することができる」(クラーク氏)
最も重要なことは、こうした取り組みによって、場所、時間、働き方を問わず、誰もが同じ従業員エクスペリエンス(従業員体験価値)を得られるよう徹底することだ。「取り組みを徹底することで誰もがハイブリッドワークの恩恵を得られるようになり、真にハイブリッドワークが機能するようになる」(クラーク氏)
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