ロシアによるウクライナ侵攻に際して、Microsoftはウクライナ政府や企業のシステムを国外のクラウドに移して同国の継続性を支援しているという。
第1次世界大戦で空軍が登場したように、ロシアによるウクライナ侵攻ではサイバー攻撃が戦争の手段として確立された。最前線の兵士と同じくらいセキュリティの専門家が重要になり、新たな技術を戦争が急速に取り込んでいくのをリアルタイムで目の当たりにしている。そう語るのはMicrosoftの社長ブラッド・スミス氏だ。
英国で開催されたイベント「Microsoft Envision」に登壇したスミス氏は、報道では2022年2月24日早朝に軍事侵攻が始まったとされているが、しばらく前からロシアはウクライナにサイバー攻撃を仕掛けていた。そして最初は心理戦だったが、やがてより破壊的な戦術に変わっていったと述べた。
「この軍事侵攻の最初の砲弾は、サイバー空間で発射された。それを最初に確認したのがMicrosoftだった。この最初の攻撃はロシア軍による組織的な方法で、ウクライナの政府、IT企業、銀行、農業企業など300を超えるターゲットに同時に仕掛けられた」
「今回の兵器は世界の半分を光速で移動する。これは極超音速兵器よりもはるかに高速だ。そのため、新たな最前線が生み出されている」
「当社は、このハイブリッド戦争の進化をリアルタイムに確認している。繰り返される出来事を目にしている。何百もの異なる標的への波のような破壊的攻撃を目撃している」
「時間がたつにつれ、事態がつながって様子が分かってきた。例えば、原子力発電所のネットワークが停止されてから数日後にロシア軍による原子力発電所への攻撃が始まった。空港周辺の都市のネットワークが停止したら、その後空港が攻撃され、空港が占領されるのを目撃するだろう」
「1日か2日だった時間の推移が数分から数時間に変わっている。これは戦争の新しい形態だ」
スミス氏は、Microsoftがウクライナ政府や民間企業を支援し、その業務とデータをクラウドに移して保護していることにも触れた。
「2022年2月に軍事侵攻が始まる1週間前、ウクライナ政府のシステムは全てオンプレミスだった。同国政府は、オンプレミスは非常に危険な場所になることに気付いた」
「今回の軍事侵攻では、同国のデータとインフラをウクライナ国外のクラウドに移さなければならないと当社は認識した。戦時下に国を守る最善の方法は、デジタル資産を分散して国家の継続性を確保することだ。バルト諸国や近隣諸国の政府は、データがどこにあるかを国民が知らないことが国民を最も安全にすると認識している」
MicrosoftはウクライナのITセキュリティ責任者に協力し、ロシアが発する偽情報へのアクセスをブロックしてクレムリンのうそとの闘争を支援している。また、ロシアの攻撃によって破壊された民間の標的をAIで特定している。最終的にはロシアに戦争行為の責任を負わせることを目的に、この技術は国連や国際刑事裁判所などの機関に無償提供されている。
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