メタバースの「国境がない」ことがセキュリティの“大問題”になるのはなぜ?メタバースを安全に活用する方法【第2回】

現実空間で安全に生きるための“常識”があるように、仮想空間のメタバースでもセキュリティを向上させるためのこつがある。メタバースで痛い目に遭わないためには、何に気を付ければよいのか。

2022年08月22日 05時00分 公開
[Ashwin KrishnanTechTarget]

 企業の間では、仮想現実(VR)技術や拡張現実(AR)技術を取り入れた「メタバース」(巨大仮想空間)を働き方改革に活用することを模索する動きがある。メタバースにはさまざまな可能性がある一方、セキュリティのリスクもあることを忘れてはならない。画面の中にある「もう一つの世界」であるメタバースを、どうすれば企業は安全に利用することができるのか。企業はメタバースを活用する際、下記のセキュリティ課題を考える必要がある。

1.“国境のない”プライバシー保護

 ユーザー一人一人に合った没入体験を可能にするためには、メタバース運用企業はさまざまな個人情報を収集することが不可欠だ。一方でユーザーは、自分がメタバースに提供しているデータのセキュリティレベルについて把握しにくい。

 概して仮想空間には国境がなく、欧州連合(EU)の「EU一般データ保護規則」(GDPR)といった地域ベースの規制が難しい。そのためプライバシーの保護は、メタバース運用企業が主体的に取り組まなければならない。

2.身元確認の難しさへの対処

 メタバースでは攻撃者がアカウントに不正アクセスし、ユーザーの身元を詐称したり、アバター(仮想キャラクター)を乗っ取ったりするリスクがある。メタバースでユーザーが相手にしている人物は「誰」なのか、身元の確認が困難だ。

3.HMDの脆弱性対策

 没入感を高めるヘッドマウントディスプレイ(HMD)には、攻撃に悪用される脆弱(ぜいじゃく)性が存在する可能性がある。攻撃者がHMDの脆弱性を突き、ユーザーになりすましてメタバースにログインできてしまうと、大きな被害につながる。

4.ユーザー間のコミュニケーションの管理

 メタバースはユーザー間のコミュニケーションを促す場だ。コミュニケーションによる関係構築には、ユーザー同士の信頼が欠かせない。悪質なユーザーが1人いれば、大きな被害が発生する可能性がある。企業はメタバースに「司会者」を入れることによってコミュニケーションを管理し、不審者を特定できる。

5.データの正確性確保

 商品の品質や評価、ユーザーの位置といった、メタバースにおける各要素の情報を信頼できるものにするには、データの正確性が重要だ。だがGPS(全地球測位システム)といった衛星測位システムによる位置測定には一定の誤差があるなど、正確性の確保にはさまざまなハードルがある。

6.ユーザー間トラブルの解決

 メタバース運用企業には、ユーザー間で発生したトラブルの対処について、十分なノウハウが蓄積されているわけではない。そのためメタバースでのデジタル資産になる「NFT」(非代替性トークン)が盗まれたといったユーザー間のトラブルが発生したとき、ユーザーは解決法のアドバイスを受けられない場合がある。


 第3回は、特にVR技術やAR技術に関する、メタバースのセキュリティ課題を紹介する。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

セキュリティ運用を最適化し、SOCの負担を軽減する「SOAR」とは?

サイバー攻撃が巧妙化し、セキュリティチームとSOCは常に厳戒態勢を取り続けている。さらにデジタルフットプリントの拡大に伴い、セキュリティデータが絶え間なく往来する事態が生じている。このような状況に対応するには、SOARが有効だ。

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

現在のSOCが抱える課題を解決、AI主導のセキュリティ運用基盤の実力とは?

最新のサイバー攻撃に即座に対応するためには、SOCを従来の在り方から変革することが重要になる。しかし、何をすればよいのか分からないという組織も多い。そこで本資料では、現在のSOCが抱えている5つの課題とその解決策を紹介する。

市場調査・トレンド パロアルトネットワークス株式会社

セキュリティの自動化はどこから始める? SecOpsチームを楽にする正しい進め方

高度化するサイバー脅威に効率的に対処するには、セキュリティの自動化が欠かせない。だが自動化の効果を高めるには、使用ツールの確認、ワークフローの分析などを行った上で、正しいステップを踏む必要がある。その進め方を解説する。

製品レビュー ゼットスケーラー株式会社

AIで脆弱性対策はどう変わる? セキュリティ運用や意思決定に与える影響力とは

脆弱性対策は作業量や難易度を予測しづらく、限られたリソースで対応するのが難しい。さらに、単体の深刻度評価のみとなる一般的なセキュリティ監査ツールでは、包括的な分析は容易ではない。これらの課題を、AIはどう解決するのか。

製品レビュー AvePoint Japan株式会社

Microsoft 365ユーザー必見:情報漏えいの危険性が高い5つのヒヤリハットとは?

情報漏えいを防ぐためには、重大なインシデントになる前のヒヤリハットをいかに防ぐかが重要になる。そこで本資料では、Microsoft 365を利用している組織に向けて、情報漏えいの危険性が高い5つのヒヤリハットを紹介する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

繧「繧ッ繧サ繧ケ繝ゥ繝ウ繧ュ繝ウ繧ー

2025/04/22 UPDATE

  1. 繝��繧ソ縺梧シ上∴縺�@縺溘i縲∽シ∵・ュ縺ッ縺ゥ繧後□縺第錐繧偵☆繧具シ溘€€IBM隱ソ譟サ縺ァ蛻、譏�
  2. 縲瑚コォ莉」驥代r謾ッ謇輔≧縲堺サ・螟悶�繝ゥ繝ウ繧オ繝�繧ヲ繧ァ繧「蟇セ遲悶�譛ャ蠖薙↓縺ゅk縺ョ縺具シ�
  3. 繝ゥ繝ウ繧オ繝�繧ヲ繧ァ繧「縺ョ蜊頑焚莉・荳翫′窶懊≠縺ョ萓オ蜈・邨瑚キッ窶昴r謔ェ逕ィ窶補€戊ヲ矩℃縺斐&繧後◆繝ェ繧ケ繧ッ縺ィ縺ッ��
  4. 縺薙�繧オ繧、繝域悽迚ゥ�溘€€蛛ス繧オ繧、繝医〒蛟倶ココ諠��ア繧呈栢縺榊叙繧九ヵ繧。繝シ繝溘Φ繧ー縺ォ縺、縺�※縺翫&繧峨>
  5. 縲祁PN縲阪′蜊ア髯コ縺ェ逅�罰縺ィ縲兄TNA縲咲ァサ陦後�蛻ゥ轤ケ縺ッ�溘€€IAM縺ョ荳サ隕√ヨ繝ャ繝ウ繝峨∪縺ィ繧�
  6. 繝ゥ繝ウ繧オ繝�繧ヲ繧ァ繧「髮�屮Black Basta縺ョ莨夊ゥア縺梧オ∝�縲€譏弱i縺九↓縺ェ縺」縺滓判謦�€��窶懈悽髻ウ窶�
  7. 辟。譁吶〒縲後そ繧ュ繝・繝ェ繝�ぅ縺ョ繝励Ο縲阪r逶ョ謖�○繧銀€懊が繝ウ繝ゥ繧、繝ウ蟄ヲ鄙偵さ繝シ繧ケ窶�5驕ク
  8. 蟆主�貂医∩縺ョ縲郡ASE縲崎ヲ狗峩縺励b�溘€€繝阪ャ繝医Ρ繝シ繧ッ繧サ繧ュ繝・繝ェ繝�ぅ縺ョ窶�3螟ァ蜍募髄窶�
  9. 繝ゥ繝ウ繧オ繝�繧ヲ繧ァ繧「謾サ謦��窶懷庶逶岩€昴′30��ク帙€€遞シ縺偵↑縺上↑縺」縺溽官鄂ェ閠��隱、邂�
  10. 縲梧囓蜿キ蛹悶↓螟ア謨励☆繧九Λ繝ウ繧オ繝�繧ヲ繧ァ繧「縲阪′蠅励∴縺ヲ繧ょョ牙ソ�〒縺阪↑縺�炊逕ア

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...