米国の教育機関が2022年4月に複数のランサムウェア攻撃を受けた。その中にはランサムウェア攻撃グループ「BlackCat」によるものもあった。被害の実態は。
ロシアによるウクライナ侵攻以来、米国内の標的に対するランサムウェア攻撃(身代金要求型マルウェア)の手は緩みつつある。それでも2022年4月には幾つかの攻撃が報告、公表された。
米連邦捜査局(FBI)は2022年4月20日(現地時間、以下同じ)、米国内の重要なインフラを混乱させる目的で、農業関連組織を標的としたランサムウェア攻撃が実施される可能性が高まっていると警告した 。米国政府が懸念を示した産業は農業だけではない。米国のサイバーセキュリティ当局は同日、英国やオーストラリアなどと共同でサイバーセキュリティ勧告を発表した。共同勧告には「ロシアの攻撃者が米国に対してサイバー攻撃を実施する可能性が増大している」という記載がある 。
結局のところ2022年4月には、米国の重要なインフラに対するランサムウェア攻撃は報道も公表もされなかった。だが大学をはじめとする教育機関に対する攻撃はあった。
複数の報道によれば 、ランサムウェア攻撃グループ「BlackCat」(別名、ALPHV)は、「ランサムウェア攻撃を実施した」という声明を2022年4月に2回にわたって公開した。1度目の声明は、同年3月にNorth Carolina Agricultural and Technical State University(以下、N.C. A&T。ノースカロライナ農工州立大学) が受けた攻撃はBlackCatが実行したものだという内容だ。この攻撃によって「教職員と学生の個人情報を盗んだ」とBlackCatは主張したという。
N.C. A&Tは「攻撃を封じ込めるために、複数のシステムをシャットダウンした」と認めている。一方で同校メディアリレーション担当ディレクターのジャッキー・トロク氏は「事件の調査は進行中だ」と前置きした上で、「複数の調査機関によれば、教職員や学生のデータは影響を受けていない」と話す。
BlackCatは2度目の声明で「Florida International University(フロリダ国際大学)から1TBを超えるデータを盗んだ」と主張した 。Florida International Universityの広報担当者は、攻撃に関する調査は進行中ではあるものの「現時点では、影響を受けたサーバには、財務情報、社会保障番号、学生の成績に関する情報は保存されていなかったと考えられる」と説明。「この事件は、教育プロセスには影響を与えていない」と話す 。
2022年4月にランサムウェア攻撃を報告した教育機関はこの2校だけではないと考えられる。Austin Peay State University (オースチン・ピー州立大学)は2022年4月、短文投稿サイト「Twitter」に、学生や教職員に向けて「今すぐ全てのPCをシャットダウンするように」といった趣旨の投稿をした。
Austin Peay State Universityがある米国テネシー州クラークスビルの地域ニュースを扱うWebメディア『Clarksville Now』(メディア事業者のSaga Communicationsが運営)によると、同校は2022年4月29日実施の最終試験を中止した。 そして同校のコンピュータ室へのアクセスを遮断し、職員に業務用PCを使わないよう指示を出した。
後編は、2022年4月に米国で発生した公共団体や企業への攻撃事例について解説する。
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