SFファン憧れの「ホログラム通話」を“夢”で終わらせない挑戦が始まる「3D」で変わるコミュニケーション【前編】

SF世界の「ホログラム通話」の体験を具現化したい――。こうした思いの下、欧州の通信事業者4社が協業して実証実験を実施した。4社が思い描く“現実的ホログラム通話”の具体像とは。

2022年11月03日 10時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 ホログラム(物体の光学的情報を記録した媒体)による光学的な像のように、現実世界に浮かび上がった相手と通話する――。ドイツのDeutsche Telekom、フランスのOrange、スペインのTelefonica、英国のVodafone Groupの通信事業者4社は、こうした“夢”の実現に取り組んでいる。

鍵を握る「MATSUKO」の技術

 4社はスロバキアの拡張現実(AR)システムベンダーMATSUKOと提携した。今回の業務提携の狙いは、通常の音声通話のように、手軽にAR技術を使った通話ができるようにすることだ。MATSUKOの技術を使ったアプリケーションは、AppleのスマートフォンOS「iOS」向けは「App Store」、GoogleのモバイルOS「Android」向けは「Google Play」、MicrosoftのクライアントOS「Windows」向けは「Microsoft Store」の各公式アプリケーションストアで提供する。

 「SF(サイエンスフィクション)世界のホログラム通話を現実的な手法として再現した」。VodafoneのCCO(最高商務責任者)であるアレックス・フロメント・カーティル氏は、今回の実証実験をこう評価する。

 こうしたAR技術を用いたコミュニケーション手段は、厳密にはホログラム通話とは異なるものの、より臨場感のあるコミュニケーションの実現に役立つ。Telefonicaのデバイス&コンシューマーIoT担当バイスプレジデントであるダニエル・エルナンデス氏は、次のように述べる。「われわれは近い将来、今回の提携によってもたらされる技術を使って、より没入感が高く、相手が目の前にいるかのようなコミュニケーション体験を提供できると確信している」

 通信事業者4社は、AR映像による没入感を高めるサービスの開発を検討中だ。スマートフォンのカメラで撮影した2D(2次元)映像を3D(3次元)映像に変換して、エンドユーザーにストリーミング配信する仕組みを想定している。5G(第5世代移動通信システム)とエッジコンピューティング(発生源でのデータ処理)による接続性の向上により、AR映像が滑らかで自然な動きになり、用途が広がるという。

 さまざまな企業が、AR技術を利用したコミュニケーションに伸びしろがあると考えている。例えば2021年には、Cisco SystemsがAR技術を利用したWeb会議サービス「Webex Hologram」を発表した。Webex Hologramは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使って、現実空間の映像に会議出席者の3D(3次元)映像を重ねて表示する。


 後編は、4社が実証実験のために開発した実験用アプリケーションの仕組みと、開発の意図を解説する。

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