ランサムウェア被害を受けた際のデータ復旧の要となるバックアップツール。今後注目される技術をベンダーに聞いた。
バックアップツールは、企業がランサムウェア(身代金要求型マルウェア)被害を受けた際の、データ復旧の要となる。本稿は、バックアップツールのベンダー複数社の見方を基に、バックアップが今後どのように進化するのかを紹介する。
本番システムとバックアップを物理的に隔離したり、ネットワークで隔離したりする「エアギャップ」を設けることは、ランサムウェアからデータを保護する方法の一つだ。この方法を取り入れたバックアップには、かなりの労力と専門知識が求められる。
エアギャップを設けるためにバックアップ用の記録媒体を本番システムから物理的に隔離させる場合、オフサイト(本番システムが稼働する場所とは別の場所)からデータを復旧させるには時間を要する。エアギャップを設けた場合でも、ランサムウェアがバックアップを感染させる可能性は残る。
イミュータブル(変更不可)の機能を有するバックアップツールを導入することで、バックアップがランサムウェアに感染するリスクを低減できる。イミュータブルのデータやシステムのスナップショット(ある時点の複写)は、本番システムと同じ場所で運用することもできるため、復旧にかかる時間を短縮できる可能性がある。
ストレージベンダーScalityの最高マーケティング責任者(CMO)を務めるポール・スペチアーレ氏は、「イミュータブルの機能を持つことが、企業向けバックアップツールにとって欠かせない要素になる」と予測する。
スペチアーレ氏が一例として挙げるのが、Amazon Web Services(AWS)のクラウドストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)の機能「オブジェクトロック」だ。これはデータを変更不可能にするための機能で、バックアップツールが向かう方向を示した例だという。
バックアップツールベンダーDruvaで最高技術エバンジェリストを務めるW・カーティス・プレストン氏は、「バックアップツールのベンダーは、人工知能(AI)技術にも期待を寄せている」と話す。AI技術でアプリケーションやユーザーの通常と異なる挙動を検知することで、防御を強化できる。継続的に更新されるAIモデルであれば、最新の脅威にも対処できる可能性が高まる。
バックアップツールベンダーAcronis Internationalで製品および技術ポジショニング担当のシニアディレクターを務めるアレクサンドル・イヴァニュク氏は、ランサムウェアをリアルタイムで検知する機能や、バックアップとストレージの自動復旧機能に注目する。「企業の最高情報責任者(CIO)が求めているのは、特別な措置を講じなくてもバックアップの安全性が保たれている状態だ」(イヴァニュク氏)
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