英国の特別支援学校が、自閉スペクトラム症(ASD)の学習者向けの「機能的スキル」「ソーシャルスキル」のトレーニングに「仮想現実」(VR)技術を取り入れた。どのように活用しているのか。
英国の特別支援学校Bettridge Schoolは、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ学習者のコミュニケーショントレーニングに「仮想現実」(VR)を活用している。このプロジェクトはITコンサルティング会社CGIの社会貢献活動の一環として実現した。
Bettridge Schoolは、ASDの学習者をはじめ、特別な教育的支援を必要とする学習者に教育を提供している。同校では、ASDの学習者は「ソーシャルスキル」や「機能的スキル」を育むトレーニングを受けている。ソーシャルスキルは、対人関係や集団生活を構築するためのスキル。機能的スキルは、身だしなみ、排せつ管理、言葉の理解など、日常生活に必要なスキルだ。
VRを活用した最初の取り組みは、ASDを持つ学習者が地元の商店を利用することを想定した、コミュニケーションのトレーニングだった。従来、Bettridge Schoolの教員は、近隣のコミュニティーに学習者を引率する形式で、こうしたトレーニングを実施していた。しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウン(都市封鎖)の影響で、従来通りのトレーニングができなくなった。これがきっかけで、同校はCGIとVR活用について話し合うようになったという。
従来はこうしたトレーニングを実施する際、訪れる商店の写真や動画を学習者にあらかじめ見てもらってから、現地に送り出していた。VRを活用する場合、例えばあらかじめ学習者に商店でのやりとりに慣れてほしいならば、その場所と全く同じ見た目の仮想空間を構築すればよい。Bettridge Schoolの校長であるジョー・ブリーズデール氏によると、同校はCGIが作成した地元の商店の仮想空間に加えて、VRで訪れることができる場所を増やす計画だ。
「技術革新は教育機関と学習者に何をもたらすか」を、Bettridge SchoolがCGIと共に検討するきっかけとなったのは、Bettridge Schoolの教員の一人がCGIの従業員と面識があったことだったという。今後Bettridge SchoolはCGIと協力して、現実世界における体験の“仮想化”をさらに進める。
後編は、ASDの学習者のトレーニングを進める上で、Bettridge Schoolが重視していることを紹介する。
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