AI技術の新たな可能性を示す「ChatGPT」に、攻撃者が関心を示し始めている。攻撃者がChatGPTを悪用すると、何が危険なのか。攻撃者はChatGPTにどのような可能性を見いだしているのか。専門家に聞く。
人工知能(AI)技術を活用したチャットbot(以下、AIチャットbot)「ChatGPT」に関心を寄せるのは、ライターなどのクリエイターだけではない。攻撃者もAIチャットbotに目を付けており、攻撃の手段として悪用する可能性がある。
開発元のOpenAIはChatGPTの機能を一部制限し、悪用を防ごうとしている。人種差別につながる言動ができないようにするなどだ。一方で同社への主要な出資元であるMicrosoftは、ChatGPTの活用範囲を広げようとしている。既にMicrosoftは、自社のAIサービス「Azure OpenAI Service」にChatGPTを組み込むことを表明済みだ。
セキュリティベンダーSophosのプリンシパルリサーチサイエンティスト、チェスター・ウィスニエフスキー氏は、ChatGPTが攻撃の実行をいかに容易にするかを研究している。ウィスニエフスキー氏によると、ChatGPTの進化はフィッシング(情報窃取を目的とした詐欺行為)を容易にする可能性がある。
ChatGPTに潜む危険性とは何か。ChatGPTを利用した攻撃に対抗するために、必要なこととは何か。ウィスニエフスキー氏に聞いた。
―― 攻撃者はChatGPTに、どのような可能性を見いだしているのでしょうか。
ウィスニエフスキー氏 フィッシングをはじめとする攻撃の手段として、ChatGPTなどのAIチャットbotを捉えた場合、大きく2つの可能性を見いだすことができる。1つ目は技術的な可能性、2つ目は社会的な可能性だ。
技術的な可能性とは「ChatGPTに、マルウェア(悪意のあるプログラム)開発といった悪事をさせることができる」といったことを指す。私が簡単に調べたところ、ChatGPTにマルウェア開発の手伝いをさせることは可能だと考えられる。
こうした技術的な可能性は、あまり重要だとは考えていない。あるマルウェアを検出した場合、そのソースコードを書いたのがイワンという名の男性なのか、キャロルという名の女性なのか、ChatGPTという名のAIチャットbotなのかは、さほど問題にならないからだ。マルウェアは誰が開発したのかを問わず、マルウェアであることに変わりはない。
次回は、ウィスニエフスキー氏が危惧する、ChatGPTの社会的な可能性を深掘りする。
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