攻撃者は常に新しい攻撃手法に目を向けている。セキュリティベンダーの調査を基に、近年拡大する攻撃手法として、「HTML」や「PDF」を悪用する手法を解説する。
サイバー攻撃者は同じ攻撃手法を使い続けるのではなく、常に新しい攻撃手法に目を向けている。メールセキュリティベンダーProofpointが2023年5月に公表した、サイバー攻撃手法に関する調査報告書「Crime Finds a Way: The Evolution and Experimentation of the Cybercrime Ecosystem」は、近年ある攻撃手法が拡大している状況を明らかにした。どのような手法なのか。
報告書は、Proofpointの研究者が2021年1月〜2023年3月の攻撃キャンペーン(一連の攻撃)を調査した結果をまとめたものだ。報告書によると、2022年半ばから「HTMLスマグリング」というサイバー攻撃手法が拡大している。HTMLスマグリングの仕組みは次の通りだ。
Proofpointが調査を通じて観測したHTMLスマグリングの使用件数は、2022年6月は5件以下だったが、同年10月には40件以上と急増した。2023年1月には10件未満に減少したものの、同年2月には20件と再び増加傾向を見せた。特にHTMLスマグリングを頻繁に使用しているのが、Proofpointが追跡する脅威グループ「TA577」だ。TA577はロシア語を用いて、さまざまな地域や企業を対象に幅広い標的型攻撃を実施する。TA577は、マクロ(アプリケーション自動操作機能)を介してランサムウェア(身代金要求型マルウェア)を拡散している。従来は「Sodinokibi」(別名REvil)を拡散していたが、昨今は別のランサムウェア「Black Basta」を拡散する手法に移行したという。
近年拡大する別の攻撃手法が、PDFファイルの悪用だ。攻撃者は悪意あるURLを記載したPDFファイルを標的に送り付け、マルウェアを拡散させる。2022年12月、イニシャルアクセスブローカー(IAB:標的への不正アクセス手段を攻撃者に提供する仲介人)を含む複数の攻撃グループが、PDFファイルを悪用し始めた。2023年2月には使用数がほぼ倍増している。
第4回は、攻撃手法の変化が高速化している状況を解説する。
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