NFT(非代替性トークン)化した医療情報は、医学研究と臨床医療に大きな変化をもたらす可能性がある。研究者が特に重視するのは「患者が自身のデータをNFTで管理すること」が患者に行動変容を促す点だ。その理由は。
代替できないデジタルデータである「NFT」(Non Fungible Token:非代替性トークン)を利用したヘルスケアデータの管理は、患者や医学研究者にさまざまなメリットをもたらす可能性があり、医療業界で期待が集まっている。NFTによるヘルスケアデータ管理を実現することは容易ではない。少なくとも、分散型台帳の技術である「ブロックチェーン」に基づくヘルスケアデータ向けシステムと、厳格なセキュリティが必要だ。
NFT化したヘルスケアデータの管理には、ブロックチェーンに基づいて構築した「生物学的データの管理システム」が必要になる。こうしたシステムだけでなく、データセキュリティを徹底することも必要だ。過去にNTFマーケットプレース(NFTの取引サイト)で生じた盗難トラブルのようなリスクを軽減するための安全対策も必要になる。
ヘルスケアデータを安全に交換するためのシステムにNFTを使うことは、医学研究と臨床医療におけるデータの取り扱いに大きな影響を与える――。研究機関Singapore National Eye Centreに勤務する眼科医のテオ・ゼン・リン氏はそう主張する。同氏は、2023年1月発行の医学雑誌『Nature Medicine』に掲載された論文「Non-fungible tokens for the management of health data」の筆頭著者だ。この論文は、NFTを利用することで、患者が自分の健康管理に積極的に関与できるようになり、長期的に見ればより良い治療結果に結び付く可能性を示している。
臨床研究や、医薬品の臨床試験などの分野にNFTが活躍する可能性は、現時点で十分に大きいとリン氏はみる。こうした分野では、研究や試験結果の正確性を証明するために、患者データの真正性が確認できることが極めて重要な意味を持つからだ。
リン氏は、患者の自律性を尊重することの意義についても言及する。臨床研究では、「IoMT」(Internet of Medical Things:医療におけるモノのインターネット)を使って、健康増進のための身体活動やバイタルサイン(生命兆候)のデータなどを監視、収集することがある。臨床試験を含む臨床研究の過程でNFTを利用することは、研究者が患者の状態をリアルタイムで正確に追跡し、患者に臨床試験のルールを順守させるのに役立つ。「患者が自分自身のデータにアクセスできるようになることは、患者の自律性を高め、自身の治療に対して患者が自ら関与する姿勢が強まる。これは臨床研究に限らず重要なことだ」(リン氏)
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
遠隔医療体制を構築する際は、患者や通常業務への影響を押さえながら進める必要がある。パンデミック下で一斉に遠隔医療体制を構築した2つの医療機関の例を紹介する。
オーストラリアでは処方箋の完全電子化が一般化しているが、制度確立までの道のりは平たんではなかった。完全電子化を阻んだ課題とその解決策とは。
コロナ禍を契機に、湾岸諸国では「デジタルヘルスケア」への移行が加速している。湾岸諸国におけるデジタルヘルスケア産業の重点投資分野とは。デジタルヘルスケア推進の”壁”とその対処法についても紹介する。
医療機関は膨大なデータを扱い、そのデータに基づいて重要な決定を下す場合がある。一方、データの質は低くなりがちだ。それはなぜか。データの品質を改善させるために必要な方策と併せて紹介する。
英国の国民保健サービスでイングランド地域を管轄するNHS Englandが、医療サービス向けの新データ基盤を構築している。この計画に英国市民団体が“待った”をかけたという。なぜなのか。
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。