医療でこそ「NFT」(非代替性トークン)が大きな期待になる理由医療情報管理にNFTを利用するメリット【後編】

NFT(非代替性トークン)化した医療情報は、医学研究と臨床医療に大きな変化をもたらす可能性がある。研究者が特に重視するのは「患者が自身のデータをNFTで管理すること」が患者に行動変容を促す点だ。その理由は。

2023年08月08日 05時15分 公開
[Aaron TanTechTarget]

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 代替できないデジタルデータである「NFT」(Non Fungible Token:非代替性トークン)を利用したヘルスケアデータの管理は、患者や医学研究者にさまざまなメリットをもたらす可能性があり、医療業界で期待が集まっている。NFTによるヘルスケアデータ管理を実現することは容易ではない。少なくとも、分散型台帳の技術である「ブロックチェーン」に基づくヘルスケアデータ向けシステムと、厳格なセキュリティが必要だ。

立ちはだかる高い壁、それでもNFTに期待を寄せる医学研究者

 NFT化したヘルスケアデータの管理には、ブロックチェーンに基づいて構築した「生物学的データの管理システム」が必要になる。こうしたシステムだけでなく、データセキュリティを徹底することも必要だ。過去にNTFマーケットプレース(NFTの取引サイト)で生じた盗難トラブルのようなリスクを軽減するための安全対策も必要になる。

 ヘルスケアデータを安全に交換するためのシステムにNFTを使うことは、医学研究と臨床医療におけるデータの取り扱いに大きな影響を与える――。研究機関Singapore National Eye Centreに勤務する眼科医のテオ・ゼン・リン氏はそう主張する。同氏は、2023年1月発行の医学雑誌『Nature Medicine』に掲載された論文「Non-fungible tokens for the management of health data」の筆頭著者だ。この論文は、NFTを利用することで、患者が自分の健康管理に積極的に関与できるようになり、長期的に見ればより良い治療結果に結び付く可能性を示している。

 臨床研究や、医薬品の臨床試験などの分野にNFTが活躍する可能性は、現時点で十分に大きいとリン氏はみる。こうした分野では、研究や試験結果の正確性を証明するために、患者データの真正性が確認できることが極めて重要な意味を持つからだ。

 リン氏は、患者の自律性を尊重することの意義についても言及する。臨床研究では、「IoMT」(Internet of Medical Things:医療におけるモノのインターネット)を使って、健康増進のための身体活動やバイタルサイン(生命兆候)のデータなどを監視、収集することがある。臨床試験を含む臨床研究の過程でNFTを利用することは、研究者が患者の状態をリアルタイムで正確に追跡し、患者に臨床試験のルールを順守させるのに役立つ。「患者が自分自身のデータにアクセスできるようになることは、患者の自律性を高め、自身の治療に対して患者が自ら関与する姿勢が強まる。これは臨床研究に限らず重要なことだ」(リン氏)

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