大学全体のDXに取り組む英国の大学UEAが、教職員のIT利用の活性化と業務効率化を目指し、ある取り組みを実施している。その内容は。
英国のイーストアングリア大学(The University of East Anglia、以下UEA)で最高情報責任者(CIO)を務めるショーン・グリーン氏は、大学全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)につながる幅広い業務を担っている。グリーン氏が取り組むプロジェクトには、UEAの学生情報を保有する基幹システムをクラウドサービスに移行する施策や、教職員が従事する業務の自動化などがある。
「学生の情報を扱う基幹システムは、会計課や学部などが保有する他のさまざまなシステムと連携する」とグリーン氏は語る。基幹システムは、各学生の履修コースや出席率、個人的ニーズ、決済に関する記録などを保有する。「学生が大学に在籍する間の重要なプラットフォームだ」(同氏)
大学が大規模システムの移行を進める場合に検討すべきポイントになるのは、移行のタイミングだ。大規模システムの移行は実施可能な機会が限られる。UEAがこのシステム移行を実施できる時期の一つは夏季だったが、「夏季期間中のシステム移行はリスクがあった」とグリーン氏は語る。結果として、同校はこのプロジェクトを15カ月に渡って進めることにした。20年間運用してきた既存システムは、2023年12月に全く新しいシステムに置き換わる。
大学には学生以外にも重要なコミュニティーがある。それは大学で働く約4000人の教職員が構成するコミュニティーだ。UEAは教職員が従事する業務の自動化にも取り組んでいる。具体的には、Microsoftのローコード開発ツール「Power Apps」の活用だ。Power Appsを使用すると、開発者でも技術的知識のないユーザーでも、ビジネスニーズを満たすカスタムアプリケーションを構築できる。
UEAの学生と教職員のコミュニティーには、積極的かつ意欲的にPower Appsを使用するユーザーがいる。グリーン氏は、Power Appsを活用するスキルをコミュニティー内に普及させたいと考えている。「経験上、ハードルになるのは扱う技術ではなく、文化やスキルであり、教職員の賛同と関心を得ることだと考えている」(同氏)
ITチームは教職員によるPower Appsの使用を後押しするための専門組織を立ち上げ、教職員に「シチズンデベロッパー」(ITを専門としない開発者)になることを推奨している。UEAは2023年秋に、参加者がプロセス自動化をはじめとする問題解決に利用できるツールを使用するハッカソン(複数の開発者がアイデアや技術を持ち寄ってアプリケーションを開発するイベント)の開催を計画している。「教職員にITスキルのトレーニングを提供したいと考えている。まずはハッカソンにとても期待している」(グリーン氏)
次回は、顧客満足度向上と業務量の削減を同時にかなえるUEAの施策を紹介する。
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