教育機関が積極的にIT活用を推進しているつくば市。2018年に開校したみどりの学園義務教育学校では、さまざまな場面で教育にプログラミングを取り入れている。その実態とは。
茨城県つくば市は、ITを教育現場に取り入れる活動を積極的に推し進めている。2018年4月に開校したつくば市立みどりの学園義務教育学校は、小学校から中学校までの義務教育を一貫して実施する、公立の小中一貫校だ。同校は開校からわずか1年で、IT活用が進んでいる「学校情報化優良校」として日本教育工学協会(JAET)の認定を受けた(認定期間:2019年4月1日〜2022年3月31日)。
開校当初、みどりの学園義務教育学校のIT環境は決して潤沢ではなく、IT活用の熟達者がそろっているわけでもなかった。タブレット80台、PC40台などの標準的な設備と、小学校担当教員20人のうちプログラミング教育の経験があるのは2人という環境の中、教員の創意工夫により同認定を受けたという。
本稿は、みどりの学園義務教育学校のプログラミング教育に関する取り組み事例を紹介する。内容は教育ITイベント「第10回学校・教育総合展」で講演した同校校長の毛利 靖氏の話に基づく。
小学校の国語科では、文章の一場面を紙芝居や劇で児童に再現してもらう授業を取り入れている場合がある。みどりの学園義務教育学校は、そうした国語の授業における作品作りにプログラミングを取り入れている。
1年生の国語の授業では、文部科学省が提供するWebベースのプログラミング環境「プログラミン」を使い、絵本『スイミー』の場面を再現するアニメーションを作成する課題を設けた。児童は魚など作中のキャラクターを自動で動かすプログラムを組み、自らの朗読に合わせて場面を提示するアニメーションを制作した。
「特定の文の朗読にかかる時間を計測し、読み終わってからキャラクターを表示させる」といったタイミングの調整を、児童は難なくこなしていたという。「紙と筆記用具などの実物体を使った作品よりも、修正が手軽にできる点は、プログラミングの大きなメリットだ」と毛利氏は語る。
2年生の図画工作科の授業でも同様に、プログラミンによる作品作りを取り入れた。「ふしぎなたまご」というテーマに沿って、卵から生まれてくるものを児童が自由にイメージする。それを表現するアニメーションを、プログラミンによって制作する。
授業を担当した教員はプログラミング教育の経験がなかったものの、自身でプログラミングのやり方をまとめた「ヒントカード」(図)を作成するなどの工夫を凝らした。他の教員の間でも、ヒントカードを「自分の授業で利用したい」という声が上がり、指導ノウハウとして広まった。
プログラミングで作品を制作する場面は、授業だけでなく課外活動にもあるという。科学部に所属する7〜9年生(中学1〜3年生に相当)は、学習者用ビジュアルプログラミングツール「Scratch」を使い、シミュレーションプログラムを作成した。外来種と在来種の数を初期値として与え、四季を通じてそれぞれがどのように増減するかをシミュレーションできるプログラムだ。毛利氏が「作ったプログラムをより多くの人に知ってもらうため、英語でプレゼンテーションをしたらどうか」と生徒に提案したところ、生徒は自ら英語のプレゼンテーション資料や読み上げ原稿を用意し、完成させたという。
電子部品やロボットなどの「ものを動かす」ことを通じたプログラミング学習の活用例もある。
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