企業におけるAI導入が着実に進む中で、失業や採用市場の縮小などが問題視されている。具体的には、どのような職種が削減の対象になりやすいのか。
AI(人工知能)技術の活用が広がることで、企業の人員削減が進む可能性がある。例えばIMF(国際通貨基金) は2024年1月に発表した調査で、AI技術は世界の雇用の40%に影響を与えるという見通しを示した。中でも先進国は、新興国よりも深刻な打撃を受ける見込みだ。特にどのような職種がAI技術による削減対象になりやすいのか。
債券信用格付け会社Moody’s Investors Serviceが2024年1月に発表した報告書「2024 AI Outlook」では、AI技術はまだ開発の初期段階にあり、「少なくとも2024年中は、企業の信用度に重大な影響を与える可能性は低い」と指摘している。特に、対面でのコミュニケーションが不要、かつ一定以上の教育レベルを必要とする業務では、AI技術による代替は難しいと予測される。
一方で、AI技術の活用が加速しているのは確かだ。背景には、AIモデルの改良や、AI技術への投資の増加、データを発生源の近くで処理する「エッジコンピューティング」の台頭といった要因がある。文章の作成や分析ができるAIツールの登場は、B2BおよびB2C向けのサービス業界に不利に働く可能性がある。
中でも最も影響を受けやすいのが、法律関連のサービスを提供する企業だ。「AIツールは、文書の作成やレビューを正確かつ効率的に実施できるため、法律事務所の一部業務がなくなる可能性が高い」と報告書は指摘している。BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスの提供企業も、AI技術の進歩で大幅に収益を失う可能性がある。
AI技術はビジネスの生産性向上や、新たな雇用機会の創出に役立つ。将来的にサービス業界の雇用市場は減少する見通しだ。だが企業はその半面、AI技術を活用することで高度な専門知識を必要とする技術サービスに活路を見いだすことができる。
後編は、企業が生成AIを導入する上で直面する可能性のある課題を整理する。
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