メタバースにおける安全性についての議論は、まだ始まったばかりだ。現状のメタバースには何が足りていないのか。安全なメタバース利用を実現するための「5つの要素」とは何か。
仮想空間「メタバース」は、エンターテインメントからビジネスまでその用途が多様に広がる可能性がある。その利用が広がれば、今後はメタバース内における安全性の議論が一段と重要になると考えられる。
企業にとっても消費者にとってもメタバースがより安全なものになるには、何が必要なのか。現状のメタバースに欠けている「5つの要素」とは何か。
メタバースで製品やサービスを第三者に提供する場合、企業は顧客にとって明確で理解しやすいプライバシーポリシーを策定しなければならない。既にメタバースプラットフォーム事業者が策定したポリシーがある場合は、それに加えて、自社製品やサービスに関する内容を補強する必要がある。
メタバースで収集対象となるデータの種類や収集期間を、分かりやすい形で明記する必要がある。データの種類には以下のようなものがある。
プライバシーポリシーには、ユーザーが自身のデータに対して持つアクセス権やダウンロード権、削除権についても明確に記載する必要がある。
メタバース内で、悪意あるユーザーが偽のIDを用いて特定個人になりすまし、NFT(非代替性トークン)やアバターのスキン(外見を変更するアイテム)などデジタル資産(プロパティ)を盗む可能性がある。デジタル資産の中にユーザーの活動履歴や所有物に関する情報が含まれる場合、それらが漏えいしてしまうリスクがある。
このような事態が発生した場合、ユーザーは製品やサービスに不信感を抱くだろう。ブロックチェーン技術を用いて所有権を追跡可能にする、といった対策を講じ、ユーザーのプライバシーを守ることが重要だ。
メタバースは世界中で利用されるため、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)のような「所在地に基づく規制」の適用が難しい。例えば、オーストラリアの企業が提供するメタバースプラットフォームで、EU市民が米国のプロパティを使用する場合、3カ国のプライバシー規制が適用される可能性がある。
事業者は、既存のプライバシー規制を組み合わせて適用し、各国ユーザーのデータプライバシーを最大限保護することが推奨される。
メタバースには未成年のユーザーも参加する。未成年のユーザーは悪意あるユーザーに狙われやすいため、事業者は、不正行為を防ぐために厳格な監視を実施する必要がある。それに併せて、無許可のデータ収集が許可されていないこと、不正行為への罰則があることをユーザーに明示する責任がある。
メタバースにおけるデータプライバシーの未来は、規制機関や政府によってではなく、企業や消費者によって決定されると筆者は考える。
顧客基盤の維持と拡大を狙う企業は、顧客のための権利策定に向けて積極的な姿勢を取っている。特にMetaをはじめとする大手ベンダーを中心に、メタバースにおけるプライバシーの在り方が議論されていくだろう。
メタバースで事業を展開する企業やユーザーは、プラットフォームを選ぶ際に、プライバシーに関する取り組みを基準にするといいだろう。プライバシーポリシーを理解しないままだと、さまざまなリスクにさらされることとなるからだ。
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