VMwareの永続ライセンス廃止でユーザーが“とんでもない苦境”に陥った理由VMware vSANユーザーも波乱の渦中に【後編】

Broadcomによる買収後、VMware製品のライセンスモデルは大きく変わり、ユーザー企業の混乱を招いている。この変更が、ユーザー企業に与えた衝撃とは。代替案を検討するユーザー企業にとっての選択肢は。

2024年06月24日 08時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

 半導体ベンダーBroadcomが仮想化技術ベンダーVMwareを買収したことが、VMware製品のユーザー企業の間に混乱を引き起こした。BroadcomがVMware製品の永続ライセンスを廃止したり、ハイパーバイザー「VMware ESXi」の無料版の提供を終了させたりしたことがその原因だ。これらの決定が、ユーザー企業のインフラに突き付けた問題とは。VMware製品を使い続けることが難しくなった企業にとっての選択肢とは何か。

VMwareの永続ライセンス廃止でユーザーが陥った苦境

 Broadcomは、新しいサブスクリプションモデルによって、製品提供における全体的なコスト削減と市場の混乱減少が期待できると見込む。同時にVMwareの競合他社は、「VMware製品よりも低価格で制限が少ないライセンス」「より多様なオプション」を提供していると主張し、VMware製品に対する自社製品の魅力を訴えている。

 仮想ストレージベンダーStorMagicのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)ソフトウェア「StorMagic SvSAN」は、vSANの競合製品だ。特に小規模インフラでHCI機能を求める中小企業や、マネージドサービスプロバイダー(MSP)をターゲットとしている。

 ITコンサルタント会社PBG Networksのプロフェッショナルサービス担当ディレクターを務めるポール・ウォズニアック氏は、「VMware製品の販売形態の変更は、中小企業やMSPを苦境に立たせている」と語る。

 「Broadcomは収益を追求しているため、vSANの価格を下げることは難しい」とウォズニアック氏は述べる。つまり小規模なシステムでvSANを利用する場合、以前よりも料金が上がる可能性があると考えるユーザー企業にとって、利用する仮想化技術を全面的に見直すことがまず選択肢として浮上してくる状況だ。

 VMwareが永続ライセンスの提供を終了したことで、ユーザー企業は以前無料で利用していた製品の分を含め、将来的なコスト増加に備えなければならなくなった。「永続ライセンスを安全策と見なしていたユーザー企業にとって、VMware製品は選択肢ではなくなった」とウォズニアック氏は強調する。

仮想化技術の分岐点

 新しい仮想化製品の導入を検討する際は、ハイパーバイザーや仮想ストレージといった、VMware製品群が対象とする仮想化の各分野について、それぞれの代替策を慎重に検討することが重要だ。

 仮想ストレージであれば、中小企業はStorMagic、大企業はNutanixやVergeIOといったベンダーが提供する製品が候補になり得る。Dell Technologiesは、HCIを実現するソフトウェア定義ストレージ(SDS)「Dell PowerFlex」を提供している。Hewlett Packard Enterpriseの「HPE GreenLake」は、ハイブリッドクラウドで仮想マシン(VM)の運用を可能にする、インフラのサブスクリプションサービスだ。オープンソースソフトウェアのハイパーバイザーを求めるならば、「Proxmox Virtual Environment」など、OS「Linux」の仮想化機能を活用したハイパーバイザーを検討するとよい。

 「vSAN搭載のハードウェアを販売するベンダーは、Broadcomとの取引に不安を感じているユーザー企業向けに選択肢を提供している」とラッフォ氏は指摘する。

 VMwareの使用継続を選択したユーザー企業にとって、製品ラインを簡素化し、サブスクリプションを限定することは長期的には利益になるという見方もある。ITコンサルティング会社Silverton Consultingのレイ・ルチェシ氏によると、追加で別ベンダーの製品を購入する必要がなくなり、機能を効率化できる。

 「以前のVMware製品群は、製品ごとに割高な料金を要求していた。Broadcomの買収によって、今後は技術面での改善が見込める。VMwareが正しい方向に進むことを期待している」(ルチェシ氏)

 ITコンサルティング会社Dragon Slayer Consultingのプレジデント兼創設者であるマーク・ステーマー氏によると、VMwareは今なお機能が豊富で成熟した仮想化製品の一つだ。「VMwareの本当の競争は、仮想化からコンテナへの技術シフトによってもたらされる」とステーマー氏は予測する。

 コンテナ技術は、小規模なハードウェアに低コストで仮想マシンを構築するのに役立つ。コンテナ関連製品は成熟途上であり、高可用性やデータ永続性の確保、データ保護といった重要な機能に不安を持つユーザー企業もいる。コンテナ関連製品が成熟すれば、そうした企業も社内でコンテナを使用するようになると考えられる。それまでの間、VMware製品は企業のVMを支え続けるはずだ。

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