VMware買収後になぜライセンスを変えた? 混乱を招いた「Broadcomの本音」VMware vSANユーザーも波乱の渦中に【前編】

BroadcomはVMwareを買収後、VMware製品のライセンスモデルを変更した。これを受け、ユーザー企業は乗り換えを検討すべきなのか。Broadcomはなぜこの変更を実行したのか。

2024年06月17日 08時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

 半導体ベンダーBroadcomによるVMware買収は、VMware製品のユーザー企業に不安をもたらしている。特にVMwareのストレージ仮想化ソフトウェア「VMware vSAN」(以下、vSAN)を利用しているユーザー企業に与える影響は大きい。実際に、BroadcomはVMware製品の永続ライセンスを廃止した他、ハイパーバイザー「ESXi」の無料版の提供も終了させた。

 こうした動きによって、一部の企業はVMware製品を使い続けることが難しくなった。一方でBroadcomは、今回の買収とそれに伴う提供形態の変更を前向きに捉えている。ユーザー企業や他の仮想化ベンダーの意見と、何が食い違っているのか。

食い違うユーザーの反応と競合の思惑、Broadcomの本音とは

 VMwareの競合となる仮想化技術ベンダーは、VMwareのユーザー企業に対して、VMwareとの契約が切れたり、VMware製品が利用できなくなったりする前に、自社製品に乗り換えるよう警告している。「VMware製品を使い続けると費用がかさみ、パフォーマンス維持のためにはより高性能なハードウェアが必要になる」というのがベンダーの一つの見方だ。

 その一方でBroadcomは、VMwareのライセンスや価格設定、製品ポートフォリオを標準化して簡素化することで、ユーザー企業により多くの選択肢を提供できるのだと主張している。

 独立系ストレージアナリストのデーブ・ラッフォ氏によると、競争の激化に直面しているVMwareのユーザー企業は、移行の必要性を検討中だ。選択肢は複数ある。Dell TechnologiesやIBM、Microsoft、Amazon Web Services(AWS)などの大手ITベンダーが、さまざまな仮想化関連製品/サービスを提供している。

 ラッフォ氏をはじめとするストレージ分野のアナリストは、VMware製品のユーザー企業が費用に不満を抱えている現状を認識している。ただしユーザー企業の結論は、Broadcomの販売方針と、VMwareの技術がユーザー企業のニーズにどれだけ適合しているかによるというのがアナリストに共通する見方だ。「ユーザー企業の決断は、ストレージだけではなく仮想化技術全体に対してどれだけこだわるかによって決まる」とラフォ氏は言う。

代替案を探すのは妥当なのか

 Broadcomの傘下となったVMwareの製品ラインアップには、4種類のサブスクリプションプランと追加サービスがある。サブスクリプションのうち、「VMware Cloud Foundation」と「vSphere Foundation」はvSANを含み、それ以外はvSphereの基本機能を利用可能だ。

 VMware Cloud Foundationは、VMwareが提供する主要な仮想化分野の製品を網羅する。具体例としては、ハイパーバイザー「VMware vSphere Hypervisor」やネットワーク仮想化ツール「VMware NSX」などだ。一方vSphere Foundationは、vSphereやvSAN、マルチクラウド管理ソフトウェア「VMware Aria」は利用可能だが、VMware Cloud Foundationよりも利用できる製品の範囲は限定的だ。

 VMware Cloud FoundationとvSphere Foundationでは、自動化やAIOpsを実現する「Tanzu Intelligence Services」を利用可能だ。AIOpsとは、AI(人工知能)技術によるIT運用を指す。Tanzu Intelligence Servicesを通じてコンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」を管理したり、ストレージ容量の増設といった追加サービスを利用したりもできる。

 VMwareのマーケティング担当バイスプレジデントであるプラシャンス・シェノイ氏は、同社の製品や販売契約が細分化することは、市場に混乱をもたらす恐れがあり、今回の形態変更はこうした問題の解消につながると考える。「ユーザー企業は、サブスクリプションよりも永続ライセンスや個別購入の方が得だと考えがちだ。だがそのような形態は、ユーザー企業における仮想化関連製品や機能の過不足につながる可能性がある」とシェノイ氏は話す。

 「『サブスクリプションモデルは従来よりも高価だ』という見解は、同一条件での比較に基づいておらず、料金についての誤解がある」というのがシェノイ氏の意見だ。「ユーザー企業に多くの選択肢を提供すること自体は悪くない。だが結果として混乱が生じており、多くのユーザー企業が自分にとって何が最適な選択なのかについて迷うようになった」(同氏)

 VMware Cloud Foundationの製品マーケティング責任者マーク・チュアン氏は、サブスクリプションモデルが「vSAN管理下のストレージ容量を自由に調整可能にしたり、VMをクラウドサービスとオンプレミスインフラの間で簡単に移行したりできる」ものになると説明する。

 「ユーザー企業からのフィードバックを見ると、より『統合された体験』を求める声が増えている。自身のニーズに応じて、個別の製品や機能を組み合わせて扱うことに疲れているようだ」(チュアン氏)


 次回は、Broadcomが考えるVMware製品の在り方と、仮想化分野における今後の市場の動きを考える。

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