PoEを使えば、ネットワーク機器にLANケーブルで給電できる他、ネットワークの管理や設計がしやすくなるというメリットもある。しかしデメリットもあるため、慎重に検討すべきだ。
電力供給規格である「PoE」(Power over Ethernet)に準拠した機器を、音声やビデオ、文字など複数のコミュニケーション手段を統合して提供するユニファイドコミュニケーション(UC)のインフラとして導入することで、機器の管理しやすさや設計の自由度が向上するなどのメリットが見込める。
ただしPoE導入には制約やデメリットもある。PoEによる給電を無駄にしないためには、利便性や効率の改善だけに目を向けるのではなく、次に示すような制約やデメリットを理解してから導入を検討した方がよい。
PoEは、各拠点に複数のネットワークを展開する企業や、平均的な企業より広い敷地を持つ企業には適していない。PoEに準拠したLANケーブルの給電距離は最大100メートルという制限がある。
リピーター(中継器)を継ぎ足すことで給電距離を延長できるが、電力効率とネットワークの管理しやすさが低下する。
給電が不必要なデバイスにPoEで給電を続けると、給電期間によっては無視できない損失となる。
PoEに用いる機器によっては電力を余分に損失してしまう恐れがある。電力損失を抑えるためには、適切なLANケーブルを選択する必要がある。LANケーブルの長さやゲージ(線径)が電力損失に影響を与える。一般的に、ケーブルが短く、ゲージが大きいほど、電力損失は少なくなる。
従来の設備からPoEに準拠したデバイスに変更するために初期費用がかかる。特に、「PoE++」(IEEE 802.3bt)に準拠するUC機器は、そうでないUC機器と比べて高額の費用が必要になる。
PoEを使用するには、給電機器(PSE)と受電機器(PD)の互換性を確保する必要がある。PoEには下位互換性があるため、古いPoE規格を片方が利用していてもそれに合わせて給電可能だ。
ただし新しい世代は利用できるLANケーブルに条件がある。具体的にはPoE(IEEE802.3af)はCAT3(カテゴリー3)以上のLANケーブルで動作するが、PoE+(IEEE802.3at)はCat5e(カテゴリー5 エンハンスド)以上の規格でないと給電できない。
互換性がないデバイスを接続するには追加のハードウェアが必要になるため、PoE導入コストが高くなる。
PoEスイッチの各ポートの電力供給量には制限がある。PoEの導入計画を立てる際は、UCデバイス数が利用可能な電力を上回らないようにしなければならない。
PoEデバイスは電流が流れることで発熱する。アルミケーブルは銅ケーブルより電気伝導率が低いため発熱量は多くなる。PoEデバイスは、準拠する通信規格が高速であるほど、発熱量が増加し、電力損失が増える傾向がある。この問題には適切な空調システムや換気システム、暖房システム、ケーブルを選ぶことで緩和できる可能性がある。
次回はPoEと混同されやすいPoDL(Power over Data Line)について解説する。
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