ストレージ各社が「NVIDIAとの協業」を望む、技術進化だけではない理由LenovoやDell、Pure Storageの狙いは?

ストレージベンダー各社がNVIDIAとの協業を発表している。Weka.ioやLenovo、Dell Technologiesなどが発表したストレージ新製品と、その狙いとは。

2024年06月18日 05時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

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 人工知能(AI)技術への注目が高まる中、ストレージベンダー各社がGPU(グラフィックス処理装置)ベンダーのNVIDIAと協業している。NVIDIAが2024年3月中旬に開催した年次イベント「GPU Technology Conference 2024」(GTC 2024)では、複数のストレージベンダーが新製品を発表した。各社の狙いは何なのか。

ベンダー各社の狙いは何なのか

 調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるブレント・エリス氏は、ストレージやオンプレミスインフラを提供するベンダーは、NVIDIAと協業することで、ユーザー企業によるAI技術の新しい取り組みを支援する準備が整っていることを示していると指摘する。

 エリス氏によると、ストレージベンダーがNVIDIAと協業するには、スループット(データ転送速度)やレイテンシ(遅延)といったストレージに関する要件を満たさなければならない。エリス氏は「AI技術の活用には、処理性能が高く、大容量のストレージだ」と述べる。ただし同氏はストレージベンダーがNVIDIAと協業することには「マーケティングの意図がある」と付け加える。

 TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)でアナリストを務めるスコット・シンクレア氏によると、社内でデータを保有するユーザー企業を抱えているストレージベンダーにとっては特にNVIDIAとの関係が重要になっている。

 AIワークロード(AI技術を組み込んだシステム)に関していえば、オンプレミスインフラのベンダーに復活の兆しが見られるとシンクレア氏は指摘する。ESGの報告書「Navigating the Cloud and AI Revolution:The State of Enterprise Storage and HCI」によると、IT担当者の78%が「価値の高い自社独自のデータは自社所有のデータセンターに保有することを望む」と答えている。この調査は、米国とカナダで働く375人のIT担当者を対象としている。

Weka.ioやLenovoなど各社の発表内容は?

 GTC 2024では、複数のストレージベンダーがAI技術に重点を置いた商品やサービスを発表した。VAST Dataは、DPU(Data Processing Unit:データ処理装置)を用いてNVIDIA製GPUの負荷を軽減し、処理性能を向上させる仕組みの構築を支援する。Weka.ioは、NVIDIAのAIアプリケーョン向けHPC(高性能計算)のレファレンスアーキテクチャ「NVIDIA DGX SuperPod」の認証を受けたハードウェアアプライアンス「WEKApod」を発表した。

 他のベンダーも、AI技術のさまざまなユースケース(想定される使用例)に対処している。Lenovoは、「生成AI」(画像やテキストを生成するAI技術)を活用したアプリケーションの用途に重点を置き、NVIDIAとの協業を拡大。Lenovoのサーバ「Lenovo ThinkSystem」は、NVIDIA製のGPU「NVIDIA H100 Tensor Core GPU」と「NVIDIA H200 Tensor Core GPU」に加え、新しいGPU「NVIDIA GB200 NVL72 Grace Blackwell」にも対応した。

 日立ヴァンタラ(Hitachi Vantara)は、同社のストレージとNVIDIA製のGPUを組み合わせたAI関連製品・サービス群「Hitachi iQ」を開発している。Hitachi iQの第一弾製品は、Hitachi VantaraのストレージをNVIDIA H100 Tensor Core GPUやAI開発サービス群「NVIDIA AI Enterprise」と組み合わせたものだ。この製品は、NVIDIAのレファレンスアーキテクチャ「NVIDIA DGX BasePOD」の認証を取得している。Pure Storageは、AIアプリケーション向けコンピューティングシステム「NVIDIA OVX」に準拠したレファレンスアーキテクチャを発表した。

 Dell Technologiesは、AIアプリケーション向けインフラ製品・サービス群「Dell AI Factory」を公開した。 Dell AI Factoryは、GPUサーバ「PowerEdge XE9680」やオールフラッシュストレージ「PowerScale F710」を、データレイクハウス(データウェアハウスとデータレイクを組み合わせたデータ基盤)、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)、AIモデルの学習と組み合わせたものだ。サーバやストレージなどのサブスクリプションサービス「Dell APEX」の一つとして提供する。

NVIDIAは唯一の選択肢になるのか

 AI技術を取り巻く情勢は変化している。現時点ではNVIDIAがGPUとその関連技術の市場をけん引しているが、Advanced Micro Devices(AMD)やIntelの他、新たにGPU市場に参入するスタートアップもNVIDIAの競合になる。ただ、シンクレア氏は「開発者が使い慣れたツールを使いたいと考える可能性もあり、その場合はNVIDIAのツールが支持を集める」と指摘する。

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