プロセッサベンダー各社が提案するサーバ向けプロセッサは、多様な方向性で進化している。Intelが新たに提供する「Xeon 6」にはどのような特徴があるのか。競合ベンダーの状況も踏まえて見てみよう。
サーバ向けプロセッサは、設計や処理能力などを含めてさまざまな方向性で進化している。AI(人工知能)技術の利用が広がることも、多様な進化を促す要因の一つとなっている。
プロセッサベンダーの一社であるIntelは、サーバ向けプロセッサ新シリーズ「Intel Xeon 6 Processors」(以下、Xeon 6)を発表した。同業のAdvanced Micro Devices(AMD)の他、独自のプロセッサの提供に乗り出しているクラウドベンダーも同社の競合になり得る存在だ。Intelは混戦のサーバ向けプロセッサ市場において、何を打ち出せるのか。
Intelは2024年6月、プロセッサシリーズXeonの新世代となるXeon 6を発表した。Xeon 6は、特徴が異なる2種類のCPUコアの設計を採用している。
台湾で2024年6月に開催されたコンピュータ見本市「Computex TAIPEI 2024」において、IntelはXeon 6シリーズの第1弾として「Xeon 6700E」を発表した。これは電力効率を高めるための改良が加えられたCPUとGPUからなる「SoC」(System on a Chip)だ。2024年第3四半期には、同社はCPUとGPUの他、AI技術向けのアクセラレーター(処理能力の向上を目的としたデバイス)であるNPU(Neural Processing Unit)で構成される「Xeon 6900P」を提供開始する計画だ。
「演算処理にアクセラレーターを組み合わせる手法に関して、より適切な手法を模索する状況は今後も続くだろう」。調査会社IDCのアナリスト、シェーン・ラウ氏はそう語る。ユーザー企業固有のアプリケーションの要件に最適化することを目指して、CPUやGPU、AI技術向けのNPUといったプロセッサの製品ラインは、今後ますます多様化するとラウ氏はみる。
Intelのロードマップには、2025年の第1四半期にP-CoreとE-Coreの製品ラインを拡大する計画がある。同社が目指すのは、ユーザー企業が自社のアプリケーションに応じて、より適した処理性能および価格のプロセッサを選べるようにすることだ。具体的には、同社は以下の製品ラインアップの拡充を計画している。
Xeon 6のP-Coreが今後競合するプロセッサとしては、まずAMDのサーバ向けプロセッサ「AMD EPYC」がある。その他、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoftといったクラウドベンダーがそれぞれ提供するカスタム設計のプロセッサも競合になり得る。クラウドベンダー各社は、Armによるプロセッサ設計である「Armアーキテクチャ」を使ったプロセッサを提供する。IntelややAMDは、命令セットアーキテクチャとして「X86」を採用するプロセッサを提供している。
「プロセッサ業界で繰り広げられているのは、開拓時代の西部(人々がさまざまな物を必要としていた)を舞台にしたショーのようなものだ」と、調査会社J. Gold Associatesの主席アナリストであるジャック・ゴールド氏は指摘する。ユーザー企業は個々に多様なニーズを抱えていて、それに対してベンダーは個々に最適なプロセッサを売り出そうとしているのだ。
プロセッサの製品が多様化することは、ユーザー企業にとっては望ましいことだ。「ベンダー間の競争によってプロセッサの選択肢が増え、それと同時に価格が下がる可能性がある」とゴールド氏は話す。その一方で、多様化するプロセッサ市場において、Intelがどれだけ善戦できるかは未知だ。
次回は、AI技術の利用を想定したプロセッサの市場動向と、個々のプロセッサ製品の進化を紹介する。
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