AI関連の処理をPCで実行する「AI PC」に、どれだけの期待が持てるのか。まだそれほど使えるPCではないという見方があるが、それは“特定の用途”を除いての話だ。
PC業界で定着しつつある「AI PC」という用語は、AI(人工知能)技術を使ったタスクを実行するためのプロセッサを搭載するPCを指す。PCベンダーやプロセッサベンダーはAI PCの売り込みを強化しているが、これがすぐに売れるとは考えられない。“役に立つPC”にはまだなっていないと言い換えることもできる。ただし「ある用途を除いて」、という条件付きだ。
AI PCによって音声や映像などコミュニケーションに関する機能が強化されることは期待できる。だが、それがエンドユーザーや企業にとってどれだけ価値のあることなのかは定かではない。おそらく、それらはそれほど必要性のない機能だ。
ただし、明確に役立ちそうな用途はある。セキュリティカンファレンス「RSA Conference 2024」で明らかになったのは、エンドユーザー向けのAI技術の用途として、セキュリティが有力な候補として挙がっていることだ。映像や音声に関する機能ほど目立った用途ではないが、エンドユーザーのセキュリティにAI技術を活用できる可能性は確かにある。
RSA Conference 2024では、至る所にAI技術に関連する展示があり、まさに今、AI技術が売り出し中であるかのように見えた。筆者はこうした状況に不思議な感じを受けた。このカンファレンスの関係者は、ずっと前からAI技術の台頭を知っているはずだと考えていたからだ。ところが、実態は違った。AI技術はまだ成熟期には至らず、実際にAI技術にできることよりも期待の方が先行する過渡期にあると見ることができる。
AI技術に関連する機能が全て期待外れというわけではない。どこを歩いても「このチャットbot」や「あの自然言語クエリ」といった話題が飛び交う中で、本当に普及が期待できそうな用途も登場している。
セキュリティベンダーCrowdStrikeのエンドポイントセキュリティツールを、IntelのNPU(ニューラルプロセッシングユニット)搭載のPCで使用すると、CPUの1%未満に低下するという報告があった。NPUとは、AI関連の演算処理用に設計されたプロセッサを指す。NPUを使ってPCで一定の分析を実行すれば、クラウドインフラに送信するデータの量を減らせるようになる。その結果、PC側でのセキュリティを強化し、検出のプロセスを高速化することができる。
セキュリティベンダーBUFFERZONE Securityのフィッシング対策ツール「NoCloud」の事例もある。これはWebサイトの分析にNPUを使用し、コンピュータビジョン(画像からその内容を理解するAI技術)と自然言語処理を活用してフィッシング詐欺を検出する手法を採用している。PC搭載のNPUが処理を担うことで、機密データをクラウドインフラと行き来させる必要がない。これによって処理の高速化が期待できる。
こうした活用例は、NPUにこれから期待される用途開発を考えれば、ほんの一握りものに過ぎない。エンドユーザーやユーザー企業がよりAI PCに関心を持てるようにするためには、AI PCに関する多様な活用例が登場する必要がある。
AI PCの新しいデバイスは、既に市場に出てきている。AI PCの性能を評価するための指標として使われている「TOPS」(Trillions of Operations Per Second:1秒間に何兆回の演算ができるかを表す指標)にまだなじみがないとしても、次第によく耳にするようになるはずだ。
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