「オンプレミス回帰」が“もはや常識”になる、これだけの理由オンプレミスインフラ再始動?【後編】

一度クラウドサービスへの移行にかじを切った企業のITインフラ戦略は、その後大きく変わりつつある。企業が「オンプレミス回帰」を重視し始めたのはなぜか。インフラ市場の変化を解説する。

2024年07月18日 07時00分 公開
[Simon RobinsonTechTarget]

 企業はクラウドサービスとオンプレミスインフラの価値を改めて比較し始めている。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)がIT部門の意思決定者に聞き取りをした結果から、一部の企業はクラウドサービスからオンプレミスインフラに回帰している現状が明らかになった。企業のインフラ戦略は幾つかの変化や新たな動向を受けて、一変した。オンプレミスインフラへの回帰が加速する背景には何があるのか。

「オンプレミス回帰」がなぜ常識に? 何が起こっているのか

 企業のオンプレミスインフラの捉え方の変化は、2021年以降における世の中の変化が関係している。当時の社会はまだ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)のさなかにあり、企業はテレワークを実施する中でクラウドサービスを活用していた。具体的には、

  • クラウドストレージによるファイル共有
  • コラボレーションツールによる従業員の協業促進

などだ。このような活動によって、一部の企業はクラウドサービスに費やすコストが増加した。これを受けて、2024年の企業は社内システムや人材といったリソースをさらに活用するために、オンプレミスインフラの積極的な利用や人材育成といった取り組みを推進している可能性がある。

 オンプレミスインフラに対する評価が変化した理由はこれだけではない。2021年以降に見受けられた、オンプレミスインフラの機能と性能の進歩も要因だと言える。その一つが、サービスとして利用できるオンプレミスインフラだ。例えば以下をはじめとしたサブスクリプション制のオンプレミスインフラがある。

  • Dell Technologiesの「Dell APEX」
  • Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE GreenLake」

 こうしたオンプレミスインフラは、クラウドサービスに近い体験を提供するように進化を遂げている。

 ESGの聞き取りでは、企業はこうした「as a Service」形式のオンプレミスインフラに対して、さまざまなメリットを感じているという。以下はその一例だ。

  • 手作業の削減によるIT戦略への注力
  • 人材定着率の改善
  • リスク低減
  • 運用コストの削減

 ストレージ分野においても、近年の進歩が目覚ましい。例えばNAND型フラッシュメモリを使ったストレージの最大容量が顕著に伸びている。コンテナの永続ストレージ(コンテナのデータを永続的に保管するストレージ)を利用して、データ保管のさまざまな課題を解消できるようにもなりつつある。一方のクラウドサービスでも、クラウドベンダーはクラウドストレージの機能充実に注力し続けている。

 新技術やサービスの強化は、オンプレミスインフラに対する評価の向上につながっている可能性がある。ストレージ市場が不安定といった懸念材料はあるが、そうした市場の動向は、企業がITインフラとしてクラウドサービスとオンプレミスインフラを併用しているハイブリッドな状態であることとは直接的な関係がない。オンプレミスインフラのベンダーは複雑化する企業のニーズに応えるために製品・サービスの拡充に努めている。そうしたベンダーの努力は、企業がオンプレミスインフラの存在意義を見直す中で実を結びつつある。

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