「ボスウェア」は、雇用主が従業員のデバイスにインストールし、行動を監視するものだ。使い方によっては良い影響と悪い影響の両方をもたらす。知っておくべきボスウェアの影響とは。
「ボスウェア」は、雇用主が従業員のデバイスにインストールするソフトウェアだ。「従業員監視ソフトウェア」「生産性監視ソフトウェア」と呼ばれることもある。ボスウェアは、AI(人工知能)技術を活用して従業員の行動の詳細を明らかにし、従業員監視の精度を向上させる。これには良い影響と悪い影響の両方がある。従業員にどのような影響があるのか。
雇用主は、従業員の生産性の監視、データ漏えいの回避、内部関係者による不正への警戒などにボスウェアを活用可能だ。企業が採用するボスウェアは、専用のソフトウェアの場合もあれば、ソフトウェアパッケージの一機能である場合もある。コラボレーションツール「Microsoft Teams」やオフィススイート「Google Workspace」には、エンドユーザーがオンライン状態かどうかを示す監視機能がある。
ボスウェアという言葉には否定的な意味合いがあり、しばしば従業員の合意を得ていない、過剰な監視を指す。スパイウェア(エンドユーザーの行動に関する情報をひそかに収集し、外部に送信するマルウェア)に例えて、従業員に過剰に干渉する監視ツールを批判する際にも用いられる表現だ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)に伴ってボスウェアは普及した。当時の雇用主は、コミュニケーションツールや勤務時間が異なるテレワーカーをまとめて監視する方法を必要としていた。
ボスウェアには負の影響もある。監視されることに慣れた従業員は、監視のプレッシャーがない状態では仕事のスキルが向上しなくなる恐れがある。従業員のデータを過剰に収集した雇用主が、生産性の基準を達成できていないことを理由に、自動的に従業員を解雇する判断もあり得る。収集した機密データが漏えいする可能性もあり、例えば、ボスウェアに含まれるキーロガーがパスワードを記録し、機密データが間接的に露出しかねないことも懸念点だ。
従業員が同意している範囲を超えた監視は、信頼の低下を招く。そうした監視は時間をかけて考えずに、絶えずデバイスで何らかの作業をする“仕事中毒”をもたらす恐れがある。仕事中毒は最終的に、燃え尽き症候群やウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)の低下の一因になる。
一方、ボスウェアを適切に活用すれば、従業員の生産性を向上させたり、内部関係者による不正やヒューマンエラーのリスクを防いだりすることも可能だ。
ボスウェアは、デバイスを通じて従業員を継続的に監視し、データを収集する。その際、収集したデータから的確な洞察を得るためにAI技術を活用することがある。そのようにして得た洞察を、従業員の生産性の分析、ランク付け、レポートに用いることも可能だ。用途として挙げられるのは、出勤状況、出勤時間、生産性の確認だ。従業員一人一人に対し、毎日、生産性のスコアを付けるボスウェアもある。
従業員が使用するデバイスに対して、ボスウェアは以下を記録、取得する機能を持つ。
この他、従業員のデバイスに対する操作や、デバイスの状態に基づく操作として以下を実行可能だ。
次回は、雇用主がボスウェアを導入したいと考える理由に迫る。
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