SSDのパフォーマンスが上がらないのは“あれ”が原因?「Open-Channel SSD」がある意味を考える【前編】

SSDの読み書きパフォーマンスが上がらない主要な原因は幾つかある。SSDの処理高速化を目的にした仕組みを基に、パフォーマンス劣化の原因と解消の方法を解説する。

2025年02月08日 08時15分 公開
[Jim HandyTechTarget]

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 SSDはHDDに比べれば読み書きパフォーマンスに優れた記憶媒体だが、それでもSSDのパフォーマンスは幾つかの要因によって制限されてしまうことがある。SSDのパフォーマンス劣化を解消できる仕組みと併せて、原因を解説する。

パフォーマンスが上がらない一つの原因

 SSDのパフォーマンスが落ちる原因を知るには、「Open-Channel SSD」の仕組みを理解すると分かりやすい。一般的なSSDは、内部の制御をコントローラーが自動で実行するため、ユーザーが細かく最適化することは難しい。対してOpen-Channel SSDでは、制御タスクの一部をSSDのコントローラーではなくホストマシンのOSが担う。

 より具体的には、Open-Channel SSDでは「ウェア管理」(ウェアレベリング)や「ガベージコレクション」「スケジューリング」といったSSDの制御タスクを、アプリケーションのワークロード(処理の負荷や作業量)を把握しつつホストマシンが実行する。これはシステム全体にメリットをもたらす可能性がある。

ウェアレベリングの影響

 まずはウェアレベリングから考えてみよう。NAND型フラッシュメモリの各メモリセル(記憶素子)は、書き込みを重ねるごとに劣化する。SSDはこれを最小限に抑えるため、データを適切に配置し、書き込みを分散させ、全てのセルに対して書き込み回数をレベリング(平均化)する。これがウェアレベリングの仕組みだ。

 一般的なSSDでは、データはホストマシンが要求した場所に書き込まれるわけではなく、SSDのコントローラーが決定した場所にマッピング(振り分け)される。マッピングされる場所には、ホストマシン側から見える記憶領域だけでなく、ホストマシン側から見えない、オーバープロビジョニングで確保された記憶領域も含まれる。これはパフォーマンスの低下を招く原因になる。オーバープロビジョニングとは、SSDの実際の物理容量に対して、OSやホストマシンに提示する論理容量を少なくする動作を指す。

 Open-Channel SSDでは、そうしたデータ配置タスクをホストマシンに移行し、オーバープロビジョニングされた領域を含む全ての利用可能な領域をホストマシンが認識できるようにする。この仕組みは、ホストマシンがアプリケーションの書き込みパフォーマンスの低下を認識できる場合に役立つ。オーバープロビジョニングされた領域をアプリケーションが利用できるように、ホストマシンが割り当てし直せるからだ。このようにOpen-Channel SSDは、同等の記憶領域を持つ標準的なSSDよりも効果的に記憶領域を活用できる。

 逆に、アプリケーションの書き込み負荷が異常に高い場合、ホストマシンはSSD内部のより大きな範囲の記憶領域をオーバープロビジョニングに割り当てる。これにより、アプリケーションが利用可能な記憶領域は少なくなるが、パフォーマンスが向上し、SSDの寿命が長くなる。

 Open-Channel SSDでは、書き込み回数を減らすための「書き込み結合」(Write Coalescing)というもう一つのウェアレベリングアルゴリズムもホストマシンが制御する。1つの場所、もしくは一連の隣接する場所への繰り返しの書き込みは、ページ(データの記録領域をまとめた単位)を満たすのに十分なデータ量になるまでホストマシンのメモリにバッファリング(一時的に記憶)される。この仕組みにより、多数の書き込みを少数にまとめることができる。全ての書き込みのバッファリングと結合は、ホストマシンのメインメモリ内のバッファ(一時的な記憶領域)で実行される。

 それに対して一般的なSSDでは、SSDのコントローラーの内部のメモリである「SRAM」(Static Random Access Memory)、もしくは外部の「DRAM」(Dynamic Random Access Memory)で書き込み結合を実行する。SRAMで実行するかDRAMで実行するかはコストとパフォーマンスのトレードオフの関係にあり、コントローラーの設計者の選択に応じて決まる。


 次回は、ガベージコレクションやスケジューリングの観点でパフォーマンスへの影響を考える。

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