「1つの言語を学べばいい時代」は終わった 開発者にとっての生存戦略は開発者のソフトスキル習得法【前編】

開発者として一歩先んじるには、技術スキルだけでなくソフトスキルが必要になる。具体的に何をどう身に付ければいいのか。

2025年02月10日 08時00分 公開
[Matt HeusserTechTarget]

関連キーワード

スキル


 競争の激しいIT業界でキャリアアップを目指すには、技術スキルだけでなくソフトスキルの習得も欠かせない。ソフトスキルは数値化しづらく、履歴書や面接の場でアピールすることは難しい。しかし、ソフトスキルを磨くことで、プロジェクトのパフォーマンス向上だけでなく、より良いキャリアプランの構築にもつなげることができる。本連載は、IT部門で働いた経験のある筆者の目線で、開発者に求められる4つのソフトスキルと、その効果的な習得法を紹介する。

1.不安定な時代を乗り切るための「しなやかさ」

会員登録(無料)が必要です

 従来、プログラマーは「COBOL」「Fortran」など単一のプログラミング言語を習得してキャリアをスタートさせ、一社で定年まで働くことが一般的だった。自身の得意なプログラミング言語を軸にアイデンティティーを確立するプログラマーは今でも珍しくない。

 しかし近年、プログラマーは現代のソフトウェアアーキテクチャ要件に適応する必要がある。開発するアプリケーションと同様に、プログラマー自身も多様な言語やシステムコンポーネントを扱いながら、ビジネスの要求を満たす柔軟性を持つ必要がある。

 柔軟な開発者とは、すなわち「順応性のある開発者」だ。新しい技術を学び、業界のトレンドを把握し続けることで、職務内容の変化や雇用機会の減少といった未来の不確実性に備えることができる。スキルセットを広げ、適応力を高めることが、こうしたキャリアの不安を軽減する鍵となる。

 変化のペースが速く要求も厳しい業界では、スキルを磨く時間を確保することは容易でない。それでも、以下のような方法で最新の情報を得ることができる。

  • 新しい技術の学習に、週2時間半を使う。もし2時間半を確保することが難しければ、1日に記事を1~2本読むなど、時間を細分化して確保することも有効だ。
  • 業界のニュースレターを購読したり、Googleアラートを設定したりして、業務やキャリアに関する最新のトピックや求人情報を追う。尊敬するソフトウェアエンジニアや、業界のリーダー、関心のある企業があれば、通知リストに加えよう。
  • ウェビナーやカンファレンスに積極的に参加する。可能であれば対面が好ましい。こうしたイベントでは、新しいアイデアや技術、アプローチを発見できるだけでなく、同業者との人脈を構築する良い機会となる。

2.交渉を優位に進めるためのコミュニケーションスキル

 筆者が駆け出しのプログラマーだった頃、担当していたプロジェクトが完了するまでに最低3カ月はかかると確信していた。しかし、経営幹部との打ち合わせに臨み、会議室を出るときには、どういうわけか1カ月でプロジェクトを完了する約束をしていた経験がある。

 ソフトウェア開発において、最も重要かつ交渉が必要になるのが「スケジュール管理」だ。それ以外にも、使用するプログラミング言語、開発プラットフォーム、労働時間、テレワークの割合などが交渉の対象になることもある。多くのプログラマーはスケジュールを「交渉する」場でスケジュールを「見積もっている」ことが少なくない。

 プログラマーは作業にかかる時間を正確に見積もることが苦手とされているが、組織としては予測に基づいて計画を立てる必要がある。開発作業を細分化し、一定期間内にどれだけ完了するか測定することで、完成時期を予測できる。

 生産的に交渉を進めるには、明確で誠実なコミュニケーションが欠かせない。相手が期待することを理解し、それがビジネス目標とどのように結び付くか解決策を考えることが重要だ。正確な予測を行うためには、チームがその期待に応えられるかどうかを率直に伝える透明性も欠かせない。

 コミュニケーションスキルの向上には、「書くこと」の習慣化が効果的だ。自身の考えを明確に整理して、論理的に伝える能力を鍛えることは、交渉をよりスムーズに進める上で役に立つ。日常のあらゆるやり取りを、スキル向上の機会と捉えることが重要だ。例えば、以下の方法を試してみよう。

  • メールやチャット(「Microsoft Teams」「Slack」など)でメッセージを送る際は、簡潔かつ明確な表現を心掛ける。
  • 記録や文書を詳細に残す。こうしたデータは将来の予測をする上で役に立ち、データに基づいた交渉を可能にする。
  • 個人ブログや、自社ニュースレターで記事を執筆する。
  • 同僚の作業をレビューし、フィードバックを提供する。
  • ビジネス向けSNS「LinkedIn」で意見を発信したり、評論をシェアしたりする。こうした活動を通して、業界における人脈を広げたり、採用担当者の目にとまる機会を増やしたりできる。

 後編は、チームと関わる上で重要になるソフトスキルについて解説する。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

生成AIで「ローコード開発」を強化するための4つの方法

ビジネスに生成AIを利用するのが当たり前になりつつある中、ローコード開発への活用を模索している組織も少なくない。開発者不足の解消や開発コストの削減など、さまざまな問題を解消するために、生成AIをどう活用すればよいのか。

製品レビュー 発注ナビ株式会社

システム開発の4つの手法とは? システム開発の流れや専門用語を基礎から解説

システム開発を任されても、「何から始めたらよいのか分からない」という担当者は多いだろう。そこで本資料では、システム開発の流れや専門用語といった基礎知識を分かりやすく解説するとともに、システム開発の4つの手法を紹介する。

製品資料 株式会社AGEST

短納期化が進むシステム開発、なぜテストのアウトソーシングが増えているのか

システムの不具合によるさまざまなリスクを回避するには網羅的なテストを行う必要があるが、自社で行うのは難しい。そこで活用したいのが外部のテスト専門会社だ。本資料ではテスト専門会社を活用するメリットや具体的な流れを解説する。

製品資料 サイボウズ株式会社

レガシーシステムからどう脱却する? 今の時代の基幹システムの在り方

レガシーシステムからの脱却が叫ばれる中、「ERP×ノーコードツール」のアプローチで基幹システムの刷新に取り組む企業が増加している。その推進に当たっては、「Fit to Company Standard」の概念を頭に入れておくことが必要になる。

製品資料 株式会社ビルドシステム

「ローコード開発×内製化」失敗の理由とは? 3つの事例から得た2つの教訓

迅速なサービスの提供を実現する手段として、「ローコード開発×内製化」が注目されている。エンジニア不足の中でも、非IT部門が開発を担える点がその理由の1つだが、全てが順調に進むわけではない。失敗事例から得た2つの教訓を紹介する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...