STEM(科学、技術、工学、数学)系の科目を専攻する女子学生の数は、年々増加傾向にある。しかし、この状況を手放しに喜べない理由がある。
男性中心のイメージが強いSTEM(科学、技術、工学、数学)分野において、その分野に進もうとする女性の数は着実に増えている。これは一見すると、人材不足や多様性が欠如するIT業界にとって喜ばしい状況だが、IT業界はその状況を手放しには喜べないのが現実だ。背景にどのような人材の問題があるのか。
英国の大学入学資格「Advanced Level General Certification of Education」(GCE A Level)において、「コンピューティング」の試験科目を選択する女子学生が増えている。2024年には同試験の女性受験者が3000人を超え、2023年から約30%増加する見込みだ。これは過去数年で最大の対前年比増加率となる。
2020年から2024年までを振り返ると、英国でGCE A Levelのコンピューティング科目を選択した女子学生の数は、
と、着実に増加している。
しかし、これはSTEM分野に進む女性を増やすための第一歩に過ぎない。重要なのは、同分野の女性を“つなぎ止めること”だ。オンライン学習ポータルを提供するLearnUponで人材部門責任者を務めるベッキー・ウォレス氏は、「STEM分野では、依然として男性優位な職場が多く、働きづらさを感じる女性は少なくない」と話す。女性の離職率を下げるためには、女性が働きやすい環境を築くことが重要だ。加えて、女性のSTEM分野進出を支援する社会的な仕組みも整備する必要がある、とウォレス氏は強調する。
男子学生も含め、コンピューティング分野を専攻する学生は年々増加傾向にある。2024年の学生数は2万370人と、2023年の1万8306人から約11%増加している。一方で、GCE A Levelで選ばれた専攻科目の上位10位にコンピューティングは入っていない。
学生がコンピューティング科目を選ばない理由はさまざまだ。例えば、コンピューティン分野に進んだ後のキャリアがどのようなものか、コンピューティングを学ぶことが将来どう役立つのかなど、将来のキャリアイメージを学生が描きにくいこと。他には、2024年に「情報通信技術」(ICT)の科目が廃止されたことが、コンピューティング分野を専攻する学生の増加に影響しているという指摘もある。
次回は、STEM業界における女性活躍を支援するために重要なことを解説する。
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