店舗や工場、倉庫で物を管理するためのスキャン技術が進化を続けている。「スマートデータキャプチャー」(SDC)によって現場の業務はどう変わるのか。その仕組みとメリットを解説する。
「スマートデータキャプチャー」(SDC)という言葉を耳にしたとき、筆者は大学の学費を稼ぐために働いた工場、倉庫、小売店などの物流現場での経験を思い出さずにはいられなかった。物流現場ではダンボールや機械、部品といった物を識別したり、追跡したりする技術が常に使われてきた。技術は時代が変わるのとともに進化する。その中では消えていった技術もある。本稿は、そうした変遷の中でスマートデータキャプチャーがどのように現場の業務に変革をもたらすのかを探る。
かつて、ピッキングや仕分けの作業では、物の識別をするのに紙の商品リストを使って作業するのが一般的だった。そうしたやり方はバーコードリーダーに取って代わられ、その後は無線の通信機能を備えるハンドヘルド端末(持ち運びやすい小型端末)も使われるようになった。端末の選択肢は、スキャナーとして使えるスマートフォンやタブレット、自律型のスキャンロボットにまで広がっている。飛行しながら物体をスキャンする機能を備えたドローンも選択肢の一つとなりつつある。
こうした技術の仕組みについてあまり知らず、深く考えない担当者や管理者もいるが、業務効率を改善するにはそれを知っておいた方がよい。物の識別や追跡をする技術を現場のオペレーションでどのように利用するかは、最終的には企業の利益にも影響する可能性があるからだ。
物の識別や追跡をさらに効率化することを目的に生まれたのが、スマートデータキャプチャーだ。スマートデータキャプチャーとは、カメラやセンサーを活用して、バーコードやQRコードばかりでなく、画像や文字、音声などのデータを取得する概念や、そのための技術を指す。
スマートデータキャプチャーの目標の一つは、物の識別や追跡の手法を、ハードウェア依存からソフトウェア中心にシフトすることだ。これにより、さまざまなハードウェアで共通のソフトウェアを利用できるようになる。実現すれば、
といった、従来の専用システムが抱えていた課題を解消できる可能性がある。
スマートデータキャプチャーでは、「コンピュータビジョン」や「拡張現実」(AR)といった技術が使われることがある。コンピュータビジョンは、高解像度のカメラや画面を活用し、画像処理を通じてその内容を認識し、理解する技術だ。その技術は、すでにスマートフォンでも使われている。これらの技術を含むスマートデータキャプチャーを利用することで、物の識別や追跡がよりスムーズになり、業務効率が向上する。データの精度が高まり、トラブル対処の時間が短縮する効果も期待できる。
例えば、小売店の従業員が、顧客のために商品を探す場面を考えてみよう。従業員が商品を探す際、カメラとディスプレイを備えた何らかの端末を使うとする。店舗内部の様子をカメラで映しながら、探すべき商品棚へのルートを指し示すAR画像を重ねれば、従業員は商品が置かれた商品棚を効率よく見つけることができる。価格の誤りを検出し、修正することにもスマートデータキャプチャーを活用可能だ。手作業による価格チェックの必要がなくなる。こうした例は、スマートデータキャプチャーによって現場の業務を効率化できるほんの数例に過ぎない。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
業務マニュアルは使われて初めてその効果を発揮するが、そもそも見られていないことから、業務課題を一向に解決できないという企業は多い。“活用されるマニュアル”を作成・共有するには、どんなポイントを押さえるべきか。
マニュアル作成において、90%以上の組織がビジネスソフトを利用しているが、それでは活用されるマニュアルへのハードルは高い。きちんと現場に使われるマニュアルにするために、ノウハウを把握しておきたい。
製造業では、不適合品を極力減らすカイゼンの取り組みが重要だ。ある調査によると、不適合品発生の原因の多くは「人」と「方法」に関連しているという。企業の対応策で一般的なのはマニュアルの運用だが、ここには落とし穴がある。
あらゆる業界でDXの取り組みが加速する一方で、成功を実感している企業は1割にも満たないという。最大の障壁となる「移行コスト」を解消し、新規ツールを「誰にでも使える」状態にするための方法を探る。
さまざまなWebシステムが使われるようになった今も、電話はやはりビジネスに不可欠なツールである。とはいえ働き方改革やDXを受け、企業における電話の在り方も大きく変わってきた。そこにフィットするソリューションがクラウドPBXだ。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。