「IBM i」で稼働するコメリの基幹システム修正は、年間およそ500件に上るという。同社のシステム開発会社であるビット・エイは、そうしたシステム修正に伴うドキュメント作成作業をどのように効率化したのか。
全国に約1200店舗のホームセンターを展開するコメリは、システムを内製していることをビジネスの「武器」としている。ITシステムを内製し、欲しいときに欲しい機能を素早く実装することが、現場作業の効率化や、事業の意思決定に必要な情報の迅速な収集・分析につながるためだ。同社の情報システム子会社であるビット・エイが、コメリグループの全事業を対象にシステムを開発・運用している。
システムを内製し、プログラムの新規作成や修正のサイクルを上げることは、それに伴うドキュメントの作成頻度も高くなるという課題を生む。スムーズなシステム開発・運用の継続のためだけでなく、内部統制の観点からもドキュメントの整備は不可欠だ。
そこでビット・エイはプログラム可視化/解析ソフトウェアを導入し、ドキュメント作成工数の削減に成功した。そのいきさつや製品選定ポイントなどを、ビット・エイ専務取締役の小林 禎氏に聞いた。
ビット・エイは基幹システムの開発・運用や、クレジットカード事業で得られる顧客属性、購買履歴などのデータ管理に、OS「IBM i」(旧称:AS/400)搭載コンピュータを利用している。IBM iで稼働する基幹システムは、コメリグループの販売管理、商品マスター管理、人事、会計などを担う。
約150台あるビット・エイ保有の全サーバのうち、19台のOSはIBM iだ。加えて約150人いる開発者のうち、約60人がIBM iで稼働するシステムの開発・運用に携わる。そこで稼働するプログラムの6割がプログラミング言語「COBOL」、4割が「RPG」で記述されており、同社は現在も新規システムの開発言語としてCOBOLを利用している。小林氏によると、同社で1年間に発生するプログラムの修正は、基幹システムだけで約500件、システム全体では約2000件に及ぶという。
プログラムをスムーズに開発・運用するためには、ドキュメントの作成が重要だ。だがこのプロセスは、作業者にとって大きな負担となる。「このプログラムを修正すると、どのプログラムに影響を及ぼすか」といった相関関係など、プログラムの仕様を綿密に調査してまとめることは手間がかかる。加えて1年で約500件発生する基幹システムのプログラム修正プロセス全てにおいてドキュメントを作成することになるため、量という面からも作業者に重くのし掛かる。
開発担当者の年齢が下がってきていることも懸念事項だ。ベテラン開発者は事業部門との折衝や要件定義に回り、実際にプログラムを作成する業務は若手が担当する。「若手はベテランに比べて開発経験が少ないため、プログラム修正による影響度の調査や工数の見積もりなど、作業に時間がかかってしまうことがしばしばある」と小林氏は問題を指摘する。
若手開発者にとっては、IBM iよりも「Windows」などのオープン系OSの方がより身近だろう。ビット・エイはこうしたオープン系OSへの移行、つまりオープン化を選択肢から外しているわけではない。「われわれには『やりたいことを実現するため、常に最良の環境を構築する』という理念がある」と小林氏は語る。なぜIBM iを使い続けるのかと言えば「IBM iをレガシーとは思っていないし、オープン化が正解だとも考えていない」(同氏)からだ。
合理的に考えた上で自社に最も適したOSなら、それを使い続けるのは当然のことだと言える。ただしそこで稼働させる基幹システムを安定運用するためには、プログラムの継続的な修正が必要だ。その負荷の軽減が、ビット・エイにとって喫緊の課題になっていた。
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