競争が激化する半導体市場において、競合ベンダーが勢いに乗る一方、苦戦を強いられているIntel。同社が現状の窮地を脱して生き残る道はまだあるのか。業界関係者に聞いた。
IntelはAI(人工知能)関連の需要で半導体市場が盛り上がる中、新技術開発の遅れや、競合ベンダーの急成長といった影響を受けて苦戦している。過去の経営判断の誤りが尾を引き、同社が抱える課題は少なくない。それでも依然として、Intelには業界屈指の影響力があり、復権への道は残されているという見方もある。Intelが生き残る道はどこにあるのか。業界に詳しい複数のアナリストに聞いた。
コンサルティング企業Moor Insights and StrategyでCEO兼チーフアナリストを務めるパトリック・ムーアヘッド氏は、IntelはPCやデータセンター向けのCPUで、従来の強固な立ち位置を取り戻す必要があると考えている。「PCとデータセンター向けCPUの設計に進歩は見られるものの、Intelの市場シェアは落ち続けている」とムーアヘッド氏は語る。
データセンター向けのAI(人工知能)アクセラレーター「Gaudi」シリーズでAI分野の強化に乗り出す考え方は正しい、とムーアヘッド氏はみる。だがAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Meta Platforms、Googleなど、大規模なデータセンターを運営する事業者は、いずれもAIアクセラレーターを自社開発している。AIモデルのトレーニングと推論をより高い処理性能でこなせるAIアクセラレーターの需要が高まっており、それに応えるべく大規模なデータセンター事業者は自社開発に乗り出しているのだ。
「Intel 18A」は、次世代の半導体製造技術としてIntelが準備を進めている新たな製造プロセスだ。Intel 18Aの構想には、「RibbonFET」(Ribbon Field Effect Transistor)という新たなトランジスタ構造の開発も含まれる。これによって、以前の半導体設計よりもワット当たりの処理性能が高くなるという。
Intelに効く手軽な特効薬はない。「IntelはIntel 18Aの計画において多数のウエハーをコスト効率よく製造できることを示さなければならない」。債券の信用格付け「Moody's Ratings」を提供するMoody's Investors Serviceでシニアバイスプレジデントを務めるラジ・ジョシ氏はそう語る。
復活を目指すIntelにとって、プロセッサの技術分野でイノベーションを起こすことは重要だが、それ以外にも、全体的に効率を改善しなければならないとムーアヘッド氏は指摘する。Intelは2024年8月、全従業員の約15%に相当する1万5000人以上を削減するという計画を発表した。「単に人員を削減すればよいというものではなく、仕事の進め方を見直さなくてはならない」。営業やマーケティングの人材を減らし過ぎていることを認識しなければ、Advanced Micro Devices(AMD)やQualcomm Technologies、NVIDIAに市場シェアを奪われることになる、と同氏は指摘する。
一方で調査会社Futurumで、AI関連のデバイス部門でプラクティスリードを務めるオリバー・ブランチャード氏は、「Intelは過去の過ちを正す方向に進むべきではない」と指摘する。「残念だが、Intelはタイムマシンに乗ることも、現在の課題を生み出した決断のいずれかを消すこともできない」(ブランチャード氏)。約10年間のミスや間違いを埋め合わせられるほどの速度で、GPU(グラフィックス処理装置)ビジネスを立て直すことはできないと同氏は補足する。
ブランチャード氏は、Intelは収益増への道をできるだけ多く作らなければならないとみている。例えば製造事業においては、米国の半導体産業の強化を目的にした法律「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)の補助金を受けて、成功につなげるチャンスがあるという。「米国の国家安全保障と経済的利益において、Intelは重要な存在であり、米国での事業を活性化させ、半導体製造を米国に戻す可能性を秘めている」(ブランチャード氏)
調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるアルビン・グエン氏によると、Intelに必要なのは、同社を正しい方向に導く新しいCEOだという。グエン氏は、新しいCEOには次のようなことが求められると語る。
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