伝搬特性が優れているとはどういうことか?
700MHz帯はなぜそれほど重要なのか
700MHz帯は伝搬特性が優れているとよくいわれる。なぜ700MHz帯の伝搬特性は優れているのか。どの程度、何と比べて優れているのか。
700MHz帯とは
2008年1月24日、米連邦通信委員会(FCC)は700MHz無線周波数帯免許の競売を開始した。この周波数帯はかつてアナログテレビ放送用に使われていたが、現在は商用・公衆安全用途に切り替わっている。この競売について報じた記事は多数ある。そのほとんどが、700MHz帯は「超一等地」と見なされていると述べ、この周波数帯が非常に貴重であることを示唆している。
なぜそれほど貴重なのだろうか。最もよくいわれるのは、700MHz帯は伝搬特性が優れているということだが、この手の記事ではなぜ700MHz帯の伝搬特性が優れているのか、どの程度、何と比べて優れているのかについて説明していない。
無線伝搬と受信電力
この質問に答えるためには、無線伝搬について知っておく必要がある。無線伝搬とは、無線波が送信装置から受信装置に伝送される際の動作を指す。残念ながら、このテーマはかなり複雑だ。詳しく語ろうとすれば高度な数学が必要になり、経路損失、フェーディング、電波干渉といった多数の要素を考慮しなければならない。しかし、ここではあまり複雑にならないよう、受信電力に話を絞ろう(何しろわれわれは無線技師ではないのだから)。携帯端末(ノートPCなど)が受信できる電力が強いほど、送信装置(携帯電話基地局など)から端末に伝送できる情報量は多くなり、信号は遠くまで届く。
受信電力は基本特性として、周波数に反比例して減衰する。言い方を変えれば、低周波数信号の方が高周波数信号に比べて送信電力は高くなる。従って、700MHzの信号は、例えば2.5GHzの信号よりも増幅されやすい(ほかの条件がすべて同じと仮定した場合)。どの程度違うのか。米国で一般に使われている周波数帯で比べてみよう。Verizon WirelessとAT&Tの携帯電話サービスはいずれも850MHzと1.9GHzを利用している。T-Mobileは2.1GHzを利用しており、SprintはモバイルWiMAXサービスに2.5GHzを使う予定だ。
図1は一般的に使われている周波数帯の受信電力を示したものだ。700MHz信号の受信電力を1ワットとして比較すると、伝送周波数が上がるほど受信電力は急降下することが分かる。Verizon WirelessとAT&Tが使っている1.9GHzを見てみよう。1.9GHzの受信電力は、700MHzに比べてほぼ90%低い。
受信電力が問題になる理由
受信電力が低下するほど、携帯端末の受信機で受信した信号をデコードするのは難しくなる。電送装置はこれを補うため、データ伝送速度を下げる。そしてデータ伝送速度が下がればスループットも低下する。
自宅の無線LANネットワークも同じ仕組みだ。ノートPCがアクセスポイントから遠くなるほど受信電力は低下する。受信電力が低下すると、802.11gアクセスポイントの伝送装置はデータ伝送速度を54Mbpsから48Mbpsへ、そして36Mbpsへと下げていき、最後には受信装置が受信電力を検出できなくなって接続が途切れる。図2ではコンシューマー向けアクセスポイント3製品でスループットと距離の関係を示した(オレンジの曲線はAppleのAirMac Expressを示す)。ノートPCが無線LANルータから離れるほどスループットが低下する様子が数字で示されている。
結論
多くの人が、700MHz帯は超一等地のような非常に価値あるものだと考えている。この周波数帯がこれほど貴重な理由の1つは、700MHz信号からの受信電力が、1.9GHzなど一般的に使われている周波数帯に比べてはるかに高いからだ。700MHz帯ではサービス提供者が、現在のサービスに比べてより高度なパフォーマンスのモバイルブロードバンドサービスを、より遠くまで届けることが可能になる。
本稿筆者のポール・デビーシ氏は、Burton Groupの上席アナリストで、ネットワーキング業界で25年余りの経験を持つ。同氏のネットワーキングシステム開発者としてのキャリアは、Bell Laboratories、Prime Computer、Chipcomでのシニアエンジニアとしてスタートした。ボストン大学でシステムエンジニアリングの理学士およびコーネル大学で電気工学の工学修士の学位を取得。
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