SaaSアプリケーションの代表格ともいえるCRM(顧客系管理システム)。それだけに選択肢も広い。SMBに適したSaaS型CRMとは何か、各業務特性からチェックポイントを洗い出そう。
連載第1回となる「中堅・中小企業の安易なSaaS移行はトラブルを招く」は、冒頭でSaaS(Software as a Service)導入の失敗事例を挙げた上で、業務システムにおけるSaaS活用の指針となる「業務システム特性」について解説した。第2回から第5回にかけては個々の業務システムについて、SaaS活用の具体的なポイントを解説していく。今回の対象は「顧客管理系システム」だ。
一口に顧客系管理システムと言っても、その範囲は多岐にわたっている。営業部門が利用する営業支援システム(SFA)もあれば、サポート部門が利用するコンタクトセンター設備(CTI)もある。今日ではこれらをまとめてCRM(Customer Relationship Management)と称することが多く、本稿でもそれに従うことにする。つまり、今回のテーマは「SaaS形態のCRM」ということになる。
CRMはこのように広い概念であるため、ユーザー企業が導入作業を進めていくうちに本来の目的を見失ってしまうというケースも少なくない。そこで、まずはCRMを「誰が何のために利用するのか?」という観点で整理・分類してみることにする(表)。
分類 | 主な利用者 | 関連キーワード | SaaS形態での提供例 | |
---|---|---|---|---|
実行系 | 営業支援系 | 営業部門 | SFA | 「eセールスマネージャ」(ソフトブレーン) 「Microsoft Dynamics CRM」(マイクロソフト) |
コンタクトセンター系 | サポート部門 | CTI | 「Contactual」(ホワイトパジャマ) 「LUTi IP-CallCenter OnDemand」(クラスギア) |
|
Web/メッセージング系 | 営業/マーケティング部門 | − | 「クライゼル」(トライコーン) 「Synergy!」(シナジーマーケティング) |
|
分析系 | 経営層/マーケティング部門 | BI | 「BI On Demand」(SAP Business Objects) 「Dr.Sum EA(集計SaaS)」(ウイングアークテクノロジーズ) |
|
総合系 | 上記のユーザーすべて | − | 「Salesforce CRM」(セールスフォース・ドットコム) 「Oracle CRM On Demand」(日本オラクル) |
|
CRMは大まかに以下の3つに分かれる。
この中の実行系は、さらに以下の3つに細分化される。
CRMの中でも「営業支援系」は比較的歴史が古く、アプリケーションも洗練されている。そのため、SaaS形態として提供されるサービスにも既存パッケージソフトウェアをベースとしたものが少なくない。「コンタクトセンター系」もCTIの流れをくんでおり、VoIP(Voice over IP)ソリューションなどと合わせて提供されるケースが多い。最近では大手のCTIベンダーやネットワーク機器ベンダーだけでなく、新興のベンチャー企業の参入も目立つようになってきた。
早期にSaaS形態もしくはアウトソーシングでの利用があった営業支援系とコンタクトセンター系に対し、最近登場してきたのが「Web/メッセージング系」と「分析系」である。Web/メッセージング系は、アンケートなどにおけるWebフォーム作成・管理、メルマガなどのメール配信、アンケート回答者やメールのあて先といった顧客情報を管理するデータベース構築・運用の機能を提供するものだ。こうした業務は従来ユーザー企業が内製でカバーしてきた。しかし、インターネット人口の増加とともに、Webやメールを活用したマーケティング施策の重要性が急速に高まってきた。そのため、ユーザー企業は個人情報漏えいに配慮しつつ、安価にWeb/メールを活用したシステムを構築する必要に迫られたのである。このニーズの高まりに応えるようにして登場してきたのがWeb/メッセージング系のSaaS型CRMである。
一方、分析系は「CRMに端を発するBI(Business Intelligence)の一種」というとらえ方ができる。ソフトウェアパッケージでの例としてはSAS Institute Japanの「SAS Customer Intelligence」が挙げられる。この製品は「BI機能が付いたCRM」であるが、SaaS形態の例として上の表に挙げた2つのサービスはいずれも汎用的なBIであり、CRMに特化したものではない。その意味で分析系は単独で存在するものではなく、実行系と組み合わせて用いられるか、総合系の一機能として組み込まれて利用されるのが一般的である。
CRMの分類が理解できたところで、第1回で取り上げた「業務システム特性」(記事参照)に従って、各特性について注意すべきポイントを詳しく見ていくことにしよう。
業務特性 | レベル |
---|---|
初期導入コスト | 中 |
自社運用負担度 | 中 |
カスタマイズ度 | 高 |
データ連携度 | 高 |
データ秘匿度 | 高 |
出典:ノークリサーチ |
次世代生成AIで優位に立つのはMeta? Google? それともマスク氏のあの会社?
生成AI時代において、データは新たな金と言える。より人間らしい反応ができるようになる...
GoogleからTikTokへ 「検索」の主役が交代する日(無料eBook)
若年層はGoogle検索ではなくTikTokやInstagramを使って商品を探す傾向が強まっているとい...
B2B企業の市場開拓で検討すべきプロセスを定義 デジタルマーケティング研究機構がモデル公開
日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構は、B2B企業が新製品やサービ...