「経営に役立つIT」を追求するCIOという役職は、中小企業にも必要なのだろうか。IT投資が消極的になる今こそ、ユーザーと経営層の間で孤立する情シス部門の役割を、経営者自ら見直す機会だともいえる。
中小企業における経営者、ユーザー部門そして情報システム部門(担当)の三者の関係は、いわゆる三位一体の構図からはほど遠い。情報システム部門は、シナジーを発揮できない状態で経営者とユーザー部門の間に挟まり、居心地が悪い思いをしている。その一方で、中小企業でも十分とはいえないまでも、道具としてITのインフラは一応整っている。しかし、経営に生かすべきITを構築、運用するためには、さらにひと工夫が必要だ。情報システム部門にその役割が振られるのは当然といえる。そしてそれを監督するのは、経営者以外にいない。そうした経営者に向けた提言が今回のテーマだ。
CIO(Chief Information Officer)的なスキルのある人材を抱える中小企業は少ない。特にITを経費として見なしている中小企業には、少ない予算の中で「提案やコンサルにお金を掛ける」という発想がないことも背景にある。中小企業にとってITは維持管理的支出であるという視点から、コンピュータはオフコン時代から経費削減のためのツールであり、経営自体を直接推進する役割を担うものではないと考えられているのだ。
そもそも中小企業の経営者は、情報システム部門の機能、役割、業務を十分に理解しているといえるのだろうか。あるいは、その役割を勘違いしてはいないだろうか。ここで、中小企業の情報システム部門の3つの特徴を取り上げ、経営者にまつわる課題を指摘したい。
1. 情報システム部門は縮小傾向
中小企業の情報システム部門は兼任か良くて1、2人程度。実際に部門として必要かどうかは別にして、経営者は専任で担当を置くことの負担は大きいと感じている。IT部門が予算をそれなりに持てる時代は終わり、今やコストを極力掛けない、あるいは外部に任せられる業務はアウトソーシングすることも珍しくないからだ。
2. 経営層のITへの関与の薄さ
経営者は、ITは企業活動(業務)の電子化をサポートする役割を担えば十分と考えているため、自らITに関与する割合は低い。情報システム部門を、いわば電子化のための“ITの守り人”とみている。
3. 情報システム部門の孤立感
情報システム部門は、今回のテーマにもなるのだが、同じ会社の部門であっても、異分子扱いを受けている。そのため、当の情報システム部門のスタッフは、経営者からもユーザー部門からも大きな不満を持たれないよう、行動や考えにおおむね保守的な傾向がある。
このような現状を踏まえ、経営者はIT部門に対して何をすべきか? これは何も、CIOのようにITと経営双方を理解すべきだといっているのではない。身近に存在するが、企業内で孤立しているIT部門を見直し、再生することこそが、経営者にとって課題解決の有効な方法の1つになる。
下図は、今後サーバやサービスを検討する際に重視すべきポイントに関して中堅・中小企業にアンケート調査した結果である。具体的な要求としてコストや業務効率、システムそのものの改善などが重視されているのが、この調査結果からも明らかだ。上位3項目は、比較的効果が体感しやすいという特徴がある。
一方、「経営支援」と回答したのは11.1%と、あまり重視されていない。業務システムは経営支援にどの程度効果を期待できるかが測りにくく、そもそもITにそこまで期待をしていないという本音がうかがえる。答えとして間違ってはいないが、予算縮小した分を経営支援に回す投資に振り替えることをしないのでは、ただ単にコストカットしたにすぎない。
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