仮想化各社のライセンスモデルの違い、仮想環境におけるソフトウェアライセンスをめぐる問題を考察する。また、クラウドの普及で仮想化のライセンス方式が変化する可能性についても論じる。
前編「プロセッサ単位かVM単位か? 仮想化各社のライセンス方式を知る」では、Hyper-V、VMwaer vCenter、VMware vSphere、VMware View、XenServerに関するライセンスの仕組みを解説した。後編ではそれらを踏まえ、各社のライセンスモデルの違い、クラウドコンピューティングの普及で仮想化のライセンス方式が変わる可能性について考察する。
VMwareの仮想マシン(VM)単位のライセンスモデルは、同社のVMware vCenterの管理ツールだけに適用される。このモデルでは、同ソフトウェアが稼働したVMの数の12カ月間の平均に基づいてライセンス料金を支払う。同社によると、CPU単位のライセンスでは、リソース利用の急増に伴って不要なコストが発生するが、VM単位のライセンスモデルではそういったコストを削減できるという。しかしVM単位のライセンス方式は、サーバ統合率、拡張性、柔軟性に影響を与えることも考えられる。
Hyper-Vの仮想化プラットフォーム全般に採用されているプロセッサ単位のライセンスモデルの場合、1つのライセンス(例えば、Windows Server Datacenter Edition)で無制限にVMを動作させられるので、コストを削減できる。SQL Serverのライセンスもプロセッサ単位方式のメリットを提供する。SQL Enterprise Editionのライセンス対象のプロセッサ上で実行できるSQLインスタンスの数に制限がないのだ。
VMwareがVMware vSphere 5で採用した仮想メモリベースのライセンスモデルでは、メモリの使用量に応じて課金される。ユーザーはデータセンター全体でメモリの割り当て量をプールし、複数のホスト間でメモリの利用権を共有できる(参考:ユーザーが物議を醸す、VMware vSphere 5の新しいライセンス)。
仮想化はCPUの使用に対する見方を変えるものだ。アプリケーションはコンピューティングハードウェアに直接アクセスするわけではなく、また、いつでもCPUを共有、拡張、移動することができるからだ。マルチコアCPUが登場したことも相まって、どれだけの数のソフトウェアライセンスが必要なのかを正確に判断するのは難しい。ソフトウェアライセンスに違反する可能性も高くなる。例えば、ついうっかりして、ライセンスで認められているよりも多くのCPU上でソフトウェアを実行することもあるだろう。あるいは、異なるプロセッサを搭載したホストにVMをライブマイグレーションしたことが、ソフトウェアライセンス契約違反になるかもしれない。将来、ソフトウェアライセンスはユーザー単位のライセンス方式に変わる可能性があり、多くのベンダーは仮想化に伴う変化に応じてソフトウェアライセンスポリシーを変更すると予想される。
クラウドは、仮想化技術のライセンスの在り方を変えるだろう。クラウドはリソースの利用をベースとするからだ。ベンダー各社が従量ベースの価格設定方式に移行するのに伴い、利用状況のモニタリングがますます重要になると思われる。クラウド価格モデルへの移行は、コストの増加につながりかねない無秩序な仮想サーバの増加にも管理者が注意を払わなければならないことを意味する。一部の企業にとっては、こういった形態の仮想化ライセンス方式では、仮想インフラが予算の枠内に収まるライセンスレベルに制約される結果、社内環境の硬直化につながる可能性もある。クラウド型のライセンス方式が適しているのは、オンデマンド方式でサービスを提供したいと考えているIT部門だ。
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